借金がある会社でも売れる?包括承継・特定承継の違いと選び方を解説
「借金がある会社にM&Aの買い手なんて来ないだろう」とお考えの経営者は少なくありません。実際、相談現場でも最初に出てくる悩みの一つです。
しかし、結論からお伝えすると、借入金や個人保証があっても会社を売却できるケースは数多く存在します。鍵となるのは、株式譲渡と事業譲渡(特定承継)のどちらを選ぶかです。
本記事では、借金がある会社でも会社を売れる仕組みと、2つの承継スキームの違い・選び方を、公的データと中小M&Aガイドラインに沿って整理します。
目次
株式譲渡・事業譲渡(特定承継)とは何か
「株式譲渡」「事業譲渡」は承継の単位が異なります。それぞれの仕組みを整理します。
- 株式譲渡:会社の株式を譲渡する方法。会社の法人格は同一のまま株主(経営権)が交代するため、契約・許認可・資産・負債は会社に帰属したまま継続する
- 事業譲渡(特定承継):特定の事業のみを切り出して個別に譲渡する方法
借金がある会社でも売れる理由
「負債がある会社は売れない」というのは、必ずしも事実ではありません。買い手は「負債を含めた事業の総合価値」を見ています。
キャッシュフローと資産の評価
営業利益・キャッシュフロー・固定資産・顧客基盤など、複数の要素を総合して価値を評価するのが一般的です。負債があっても、それを上回る収益力や資産があれば、譲渡は十分に成立し得ます。
後継者不在で承継ニーズは強い
背景には根強い後継者問題があります。帝国データバンクの調査では、2024年の全国・後継者不在率は52.1%でした(出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024)」)。買い手にも譲渡先を選ぶ動機が強まっています。
株式譲渡の特徴
株式譲渡は、最も活用される承継スキームです。
メリット
- 契約・許認可・取引関係をそのまま維持できる
- 従業員の同意取得が原則として不要
- 個人株主は申告分離課税(20.315%)のメリットを享受できる(出典:国税庁)
デメリット
- 負債・簿外債務も含めて引継ぐためデューデリジェンスが厳しめ
- 株主全員の同意が事実上必要となるケースが多い
簿外債務(=帳簿に載っていない潜在的な債務)の有無は買い手が最も気にする点の一つです。事前の整理が交渉のスムーズさを左右します。
特定承継(事業譲渡)の特徴
事業譲渡は、必要な事業だけを切り出して譲渡する方法です。
メリット
- 不要な負債を譲渡対象から外せる
- 複数事業のうち一部だけを売却できる
- 買い手にとってのリスクが限定されるため成約しやすいケースもある
デメリット
- 契約・許認可・従業員の個別移転手続きが必要
- 譲渡側に法人税・消費税の検討が発生
- 株主総会の特別決議が必要(議決権の3分の2以上の賛成、会社法)
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
稼ぎ頭の事業だけを売ることは可能か
「主力事業だけを売って、残った会社で借金を返済したい」というご相談は実務でよくあります。事業譲渡なら原則として可能ですが、いくつかの条件があります。
事業の独立性
収益・人員・契約が独立して把握できる事業ほど、切り出しやすくなります。共有資産が多い場合は、配賦ルールの整理が必要です。
どちらの方法が自社に向いているか
判断軸を整理しておくと、初動のスピードが変わります。
| こんな会社は | 向いているスキーム |
|---|---|
| 単一事業で契約も維持したい | 株式譲渡 |
| 複数事業のうち一部だけ売りたい | 特定承継(事業譲渡) |
| 不要な負債を切り離したい | 特定承継(事業譲渡) |
個人保証はどう扱われるのか
借金問題と切り離せないのが、経営者の個人保証です。
経営者保証ガイドラインの活用
中小企業庁・金融庁が公表する「経営者保証に関するガイドライン」「経営者保証改革プログラム」に基づき、個人保証の解除や代替措置の交渉余地が広がっています(出典:中小企業庁「経営者保証に関するガイドライン」、金融庁「経営者保証改革プログラム」)。
M&A時に個人保証の引継ぎ・解除を放置すると、譲渡後も売り手側が責任を負う構造が残ります。クロージング前に必ず整理することが鉄則です。
まず何から始めるべきか
「借金があるから動けない」という思い込みが、最大の機会損失になりかねません。最初の一歩は、社内資料の棚卸しと専門家への相談からです。
初動でやるべきこと
- 負債・契約・資産の一覧化(簿外債務がないかも確認)
- 事業ごとの損益・契約の整理
- 個人保証の現状把握と金融機関との関係整理
- 中小M&Aガイドラインに準拠する支援機関への相談
最初の整理を一人で抱え込む必要はありません。中立的な立場で相談できる窓口を活用し、現状を見える化することが第一歩です。
承継全体の進め方は、事業承継の流れのページにも整理しています。
・借金があっても売却の道はある
・包括承継/特定承継の使い分けが鍵
・個人保証は早期にガイドラインで整理
道筋は、思っている以上に複数あります。
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。
「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。
※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況や最新の制度・税制改正により異なる場合があります。