事業承継の相談はどこへ?窓口7選と選び方

「事業承継の相談、いったいどこに持ち込めばいいのか」——そう悩む経営者の方は少なくありません。税理士、弁護士、M&A仲介会社、公的機関と選択肢が多く、最初の一歩が踏み出せない状態になりがちです。

結論をお伝えすると、事業承継の相談先は「一か所に絞る」のではなく、「相談内容の性質に応じて複数の窓口を使い分ける」のが正解です。まず無料の公的機関で全体像を把握し、その後に専門家やM&A仲介を活用する——この流れが失敗しない基本ロードマップです。

本記事では、事業承継の相談窓口7つを費用・特徴・向いている場面とともに解説します。「最初にどこへ行くべきか」のステップも最終章でお示しします。

相談先は複数が正解

「事業承継の相談は一か所で完結できる」——そう思う方もいるかもしれません。しかし実際には、税務・法務・企業価値評価・後継者マッチングと複数の専門領域が絡み合う承継において、一つの窓口がすべてをカバーするのは難しいのが現状です。

相談先を一か所に絞ると、専門外の情報が不足したまま判断してしまうリスクがあります。「顧問税理士だけに任せた結果、M&Aの可能性を知らずに廃業を選んだ」というケースは、実際に少なくありません。お気づきでしょうか、相談先の使い方を間違えると、費用だけかかって前に進まないという事態も生じます。

相談内容の性質は大きく3種類

相談の目的に応じて、適した窓口が変わります。「全体像・方向性を把握したい」なら公的機関(無料)が適切です。「税務・株式評価を整理したい」なら税理士・公認会計士、「具体的な売却交渉を進めたい」ならM&A仲介会社・金融機関・直接譲渡先候補へと進む流れが基本です。

7つの相談先を一覧で確認する

まず全体像を把握するため、主な相談先7つを以下の表で整理します。この7種類は役割と費用の性質がそれぞれ異なるため、段階に応じて使い分けることが大切です。

相談先 費用 向いている相談内容
① 事業承継・引継ぎ支援センター 無料 全体方針の確認・後継者マッチング
② 商工会・商工会議所 無料 初期相談・地域の専門家紹介
③ 税理士・公認会計士 有料(顧問外は別途) 株式評価・贈与税・相続税の試算
④ 弁護士・司法書士 有料 契約書確認・法的リスクの排除
⑤ 金融機関(銀行・信用金庫) 無料〜有料 後継者への資金調達・融資支援
⑥ M&A仲介会社 成功報酬型が多い 買い手候補の選定・交渉全般
⑦ 直接譲渡先(グループイン先) 仲介手数料なし 引継ぎ先候補との直接交渉
📋 この章のまとめ
・相談先は「目的別に複数使い分ける」のが正解
・無料の公的窓口(①②)から始め、専門家(③④)→仲介・譲渡先(⑥⑦)の順に進むのが基本の流れ
・金融機関(⑤)は後継者の資金調達で特に有効

無料で使える公的窓口

費用をかけずに始められる公的相談窓口が2つあります。「まだ方向性が決まっていない」「M&Aが自社に向いているのかすら分からない」という段階では、この2つから動くのが最も安全です。最初から有料の専門家や仲介会社へ直行すると、不要なコストや情報の偏りが生まれます。

事業承継・引継ぎ支援センター

中小企業庁が全国47都道府県に設置している事業承継の専門相談機関です(出典:中小企業庁)。親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のいずれにも対応しており、相談は無料です。令和4年度(2022年度)の年間相談件数は約59,000件に達しており(出典:中小企業庁)、年々増え続けています。

センターが対応できる主な支援は3つです。①事業承継計画の策定サポート、②後継者候補の紹介(後継者人材バンクへの登録含む)、③税理士・弁護士など専門家との連携による書類整備の支援です。「まず話を聞いてもらいたい」「自社の状況で何をすべきか分からない」という方には、最初の相談先として最も使いやすい窓口です。

商工会・商工会議所の活用法

全国に設置されている経済団体で、中小企業への経営支援を幅広く担っています。事業承継の相談は無料で受け付けており、経営指導員が対応します。深い専門知識には限界がありますが、「地域の税理士や専門家を紹介してほしい」「補助金の情報を整理したい」という段階では有効な入口です。

事業承継・引継ぎ補助金(最大800万円)の情報収集にも活用でき、認定支援機関との連携を案内してもらえる場合があります。初回相談の場所を迷ったときは、商工会議所でも十分に機能します。

📋 この章のまとめ
・事業承継・引継ぎ支援センター:専門性が高く、後継者マッチングにも対応。最初の相談先として活用する
・商工会・商工会議所:入口の相談や地域専門家の紹介に適している
・いずれも無料で利用でき、承継初期の「方向性確認」に最適

税理士・弁護士に頼む場面

公的窓口で全体の方向性が定まったら、次は専門家への個別相談に移ります。税理士と弁護士はそれぞれ役割が異なり、どちらも事業承継の実務に欠かせません。ただし、「どのタイミングで誰に頼むか」を間違えると、費用対効果が下がります。

税理士・公認会計士が担う領域

株式の評価額の算定、贈与税・相続税のシミュレーション、事業承継税制(2028年3月末まで延長)の適用可否の確認は、税理士の専門領域です。顧問税理士がいれば、まずその方への相談が最短ルートになります。ただし、すべての税理士がM&Aや株式評価の実務に精通しているわけではありません。「事業承継・M&Aに対応した実績があるか」を事前に確認しておくことが望ましいです。

金融機関(取引銀行・信用金庫)も、従業員承継(MBO)や親族承継で後継者の資金が不足している場合に、日本政策金融公庫と連携した融資支援を行っています。税理士との相談と並行して動くことで、資金面の見通しが早く立ちます。

弁護士・司法書士の役割

秘密保持契約(NDA)の作成、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書の内容確認、表明保証条項(=売却後の法的責任に関わる条項)のチェックは弁護士の仕事です。「契約書を読んだがよく理解できない」という場合は、サインの前に必ず弁護士に確認を依頼してください。株式移転の登記手続きは司法書士が担い、費用は数万〜十数万円が目安です。

📌 ポイント
税理士は「税務面の最適化」、弁護士は「法的リスクの排除」と役割が分かれています。承継の後半では両者に関与してもらうのが理想的です。二者が連携できる体制を持っているか否かも、専門家選びの重要な判断基準です。

M&A仲介会社の選び方

第三者への承継(M&A)を進めるなら、M&A仲介会社またはM&Aアドバイザリー会社が主な相談窓口になります。業者によってサービスの質・費用・得意分野に大きな差があるため、慎重に選ぶ姿勢が求められます。

仲介型と直接譲渡型は何が違うか

「仲介型」は売り手・買い手双方から仲介手数料を受け取るビジネスモデルです。中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)では、この「両手取り」には利益相反リスクが伴うと明記されており、経営者は仕組みを理解したうえで利用する姿勢が求められます。

一方、「直接譲渡型」とは、買い手となる企業が売り手の経営者に直接アプローチし、自社グループとして迎え入れる方式です。仲介手数料が発生しない分、譲渡条件に影響が出る場合があります。どちらの方式が自社に向いているかは、承継の目的と相手先の要件によって変わります。

登録機関かどうかを確認する

2022年8月、中小企業庁はM&A支援機関の登録制度を創設しました。登録機関は一定の行動指針を守ることを誓約しており、2024年現在で約3,000社超が登録されています(出典:中小企業庁)。業者を選ぶ際は、中小企業庁のウェブサイトで登録の有無を確認することをお勧めします。

⚠️ 注意
「着手金を多く取って動かない」「自社の情報が競合他社に漏れた」という被害事例があります。中小M&Aガイドライン(第3版)への準拠状況と、中小企業庁への登録の有無を、相談前に必ず確認してください。
「相談先を探す前に、誰に会社を引き継ぐかの方向性を整理したい——その前に、譲渡先選びから一緒に考えませんか。」

私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではなく、自社グループに迎え入れる譲渡先として活動しています。譲渡をご検討中の経営者の方からのご相談をお待ちしています。

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相談先を選ぶ4つの基準

数ある相談先から自社に合う窓口を選ぶには、何を基準にすれば良いのでしょうか。「無料かどうか」だけを基準にしてしまうと、専門性の低い窓口で時間を無駄にするリスクがあります。以下の4点を面談で確認することが、後悔しない選び方の近道です。

実績と専門性の確認ポイント

①同業種・同規模の事業承継実績があるか(IT企業と飲食業では企業価値評価の手法が異なります)、②担当者がM&A・事業承継の専門資格や具体的な経験を持っているか、③税理士・弁護士・金融機関など複数の専門家と連携できる体制があるか——これら3点を最初の面談で確認してください。

費用体系の透明性を先に確認する

「成功報酬のみ・着手金なし」を前面に出す業者が増えていますが、相談初期は無料でも進行途中に費用が発生するケースがあります。④費用体系の全体像を最初の面談で書面にて確認することが安全です。

皆さまの会社が「今どの段階にいるか」によっても最適な相談先は変わります。「まだ漠然としている」なら公的センター、「ある程度方向性が決まっている」なら専門家・M&A仲介——という使い分けが現実的です。

📋 この章のまとめ
選び方の4基準:①同業種の実績 ②担当者の専門経験 ③専門家との連携体制 ④費用体系の透明性。「無料相談」の看板だけで選ばず、上記4点を面談で確認することが、失敗を防ぐ一手です。

相談件数が増えた背景

「M&A・事業承継の相談窓口が、ここ数年で急増した」という事実をご存じでしょうか。選択肢が増えたことは経営者にとってメリットですが、その背景には日本の中小企業が直面する深刻な構造問題があります。

後継者不在問題が引き金になった

帝国データバンク「全国企業後継者問題に関するアンケート調査」(2024年版)によると、国内企業の後継者不在率は53.9%に達しています。2社に1社が後継者問題を抱えている計算です。70代以上の経営者では不在率がさらに高く、「引き継ぐ人がいない=廃業」という危機感が政府を動かしました。この数字が示すのは、経営者個人の問題ではなく、産業構造としての課題だということです。

支援制度の整備が急ピッチで進んだ

政府は2021年以降、事業承継・引継ぎ支援センターの機能強化を進めました。令和4年度(2022年度)の全国センターへの年間相談件数は約59,000件に達しています(出典:中小企業庁)。さらに2022年8月には登録M&A支援機関制度を創設し、2024年現在で約3,000社超が登録されています(出典:中小企業庁)。制度開始からわずか2年足らずでの急増です。

この変化が示すのは「相談先の増加=質の担保と選択肢の広がり」という構造です。かつては「税理士か銀行に任せるしかない」という時代から、「公的センター・仲介会社・直接譲渡先を比較して選べる時代」へと変わりつつあります。だからこそ、「どこに相談するか」の判断が以前より重要になっています。

📌 ポイント
後継者不在率53.9%(帝国データバンク2024年版)という現実が、制度整備を加速させました。相談窓口の充実は「社会全体の課題として国が本腰を入れている証拠」ともいえます。経営者にとってはこれが、いまこそ動き出す理由でもあります。

相談前に準備すること

どの窓口を使うにしても、事前準備の有無で相談の質が大きく変わります。公的センターへの最初の相談であれば、難しい書類は一切不要です。「完璧に揃えてから行こう」と思って動き出せなくなる経営者の方が多いため、まず手元にあるものから準備する姿勢で十分です。

持参したほうが良い書類

  • 直近3期分の決算書
  • 会社の概要(業種・従業員数・主要取引先・所在地)
  • 株主名簿(誰がいくら株を持っているか)
  • 個人保証・担保の一覧(借入がある場合)

公的センターへの最初の相談であれば、決算書と会社概要だけでも話が進みます。専門家(税理士・弁護士)への相談では、上記書類を揃えて臨む方が短時間で具体的な回答が得られます。

相談前に整理しておく3点

書類よりも先に整理すべきことがあります。①相談の目的を一言で言えるか(「後継者探し」「税金の試算」「全体像の把握」等)、②希望するタイムライン(「3年以内に」「5年後」「できるだけ早く」等)、③従業員・取引先・社名の継続など、自分が最も守りたいことは何か——この3点を事前に整理しておくだけで、初回の相談時間を有効に使えます。

✅ 実践ポイント
今すぐできる3つの行動:
①地域の事業承継・引継ぎ支援センターを検索し、無料相談の予約を入れる
②直近3期の決算書を手元に準備する
③「誰に何を相談したいか」を紙一枚にまとめておく

最初の一歩をどこから

これまで解説した7つの相談窓口を踏まえ、「最初の一歩」をどこに置くべきかをステップで整理します。全体のロードマップが見えると、動き出しの心理的なハードルが下がります。

3ステップで始める相談の流れ

  • 1

    まず事業承継・引継ぎ支援センター(または商工会)へ無料相談。自社に向いた承継方法と全体スケジュールの目安を確認する。事業承継・M&Aのプロセスの流れはこちらも参考にしてください。

  • 2

    税務面は顧問税理士(または事業承継に強い税理士)に株式評価・税負担のシミュレーションを依頼する。契約書の確認段階では弁護士に加わってもらう。

  • 3

    第三者承継(M&A)を検討するなら、登録M&A支援機関または直接譲渡先候補に接触し、条件の比較・検討を始める。

準備より「早く動く」ことが先決

帝国データバンクのデータ(2024年版)によると、80代の経営者では承継計画が白紙になる割合が大幅に上昇します。「もう少し状況が落ち着いてから」という先送りが、選択肢を狭めることにつながります。

事業承継の相談は、準備が完璧でなくても始められます。一人で抱え込まず、まず公的センターに話を聞いてもらうだけでも、見えてくるものがあります。そこから次の道が開けます。

📋 この章のまとめ
・ステップ1:公的センターで全体方針を確認(無料)
・ステップ2:税理士・弁護士で個別課題を整理
・ステップ3:M&A仲介または直接譲渡先候補に接触
・「準備が整ってから」より「まず一歩を踏み出す」ことが先決
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監修:株式会社SDアドバイザーズ 事業承継グループ
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代表取締役 高木栄児