【2026年4月号】黒字なのに廃業する会社が半数以上。決算期だからこそ考えたい、会社の将来の選択肢。

3月期決算が締まる会社も多いこの時期、一年間の数字と向き合う節目として、今月号では「黒字廃業」の実態データ、補助金制度の解説、そして雇用と技術を守りながら第三者承継を成功させた実例をお届けします。


特集コラム:決算を終えた今こそ、自社の将来の選択肢を考えてみませんか

3月期決算が締まる会社も多いのではないでしょうか。このコラムでは売上・利益などの数字だけではなく、会社の将来について少し別の角度から考えていただきたいと思います。

2025年版中小企業白書によると、2024年に休廃業・解散した企業のうち、黒字状態で廃業した企業の割合は51.1%にのぼります(帝国データバンク調べ)。廃業した会社の2社に1社以上が、赤字だったからではなく、別の理由で幕を閉じているのです。

さらに踏み込んだデータがあります。内閣官房の資料(2024年3月)によれば、後継者が不在と回答した企業のうち、赤字企業の割合は3割弱。後継者問題を抱えながら廃業の可能性がある企業の7割超が、実は黒字経営なのです(日本商工会議所「事業承継に関する実態アンケート」2024年)。業績ではなく、引き継ぐ人がいないことが、廃業の主な理由になっているというのが、日本の中小企業の現実です。

「黒字なのに廃業」という選択をする前に、事業承継という道があります。**黒字企業が事業承継を選ぶことで何が変わるのか、具体的な選択肢と進め方について、こちらのコラム「廃業検討中の経営者必見!黒字企業が選ぶべき事業承継の道筋と廃業回避の具体策」で詳しく解説しています。

また同じ調査では、売り手としてM&Aを実施する際に最も重視する事項として、「従業員の雇用維持」が82.7%と断トツの1位でした(東京商工リサーチ、令和2年度委託調査)。経営者がM&Aという選択をする背景には、長年ともに歩んできた従業員を守りたいという思いが色濃くあります。

決算の数字が出たこのタイミングは、会社の将来の選択肢について考える良い機会かもしれません。

出典:2025年版中小企業白書「第8節 開業、倒産・休廃業」(帝国データバンク調べ)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_8.html
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料」(2024年3月26日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai25/shiryou1.pdf


事業承継・M&A補助金 第14次公募――新設「100億企業特例」と事前着手廃止の2大変更点を解説

令和7年度補正予算に基づく「事業承継・M&A補助金(第14次公募)」は、令和7年度から名称を新たに改めた支援制度です。親族内・従業員承継からM&A、M&A後の統合(PMI)まで、事業承継の各フェーズを幅広くカバーしています。

今次公募(第14次)の主な枠の内容は以下の通りです。

① 事業承継促進枠(親族内・従業員承継向け)

今後5年以内に親族内または従業員への承継を予定する企業が対象。設備投資や店舗改築などに活用できます。補助率は1/2または2/3(小規模事業者は2/3)、補助上限は最大1,000万円(一定の賃上げ実施の場合)。

② 専門家活用枠(M&A検討中の売り手・買い手向け)

M&Aに向けてFA(フィナンシャル・アドバイザー)や仲介業者を活用する際の費用を補助。デュー・ディリジェンス費用も対象です。補助上限は通常600〜800万円、「100億企業特例」を満たす買い手は最大2,000万円。

③ PMI推進枠(M&A後の統合支援向け)

M&Aのクロージングから1年以内に統合プロセス(PMI)に取り組む買い手企業向け。財務・人事・業務フロー統合のコンサルタント費用から設備投資まで対象となります。

なお、今次公募から「事前着手制度」が原則廃止されました。交付決定通知を受けた後でなければ、契約・発注はできません。また申請にはGビズIDプライムの取得が必須で、発行に2〜3週間かかる場合があります。

この補助金は年間を通じて複数回の公募が行われます。今回のタイミングを逃した方も、次回公募に向けた準備を今から始めることが採択の近道です。GビズIDの取得や認定経営革新等支援機関との連携など、事前準備には時間がかかります。

なお、補助金申請の前提となるM&Aの費用全体の考え方については、「事業承継・M&Aにかかる費用はいくら?手数料の相場と節約方法を徹底解説」もあわせてご覧ください。

出典:中小企業庁「中小企業生産性革命推進事業『事業承継・M&A補助金』(十四次公募)の公募要領を公表します」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260130001.html


中小企業庁、「連続的M&A×PMI」成功要因セミナーを開催――M&Aの「その後」に注目が集まる理由

中小企業庁は2026年3月24日、「中小企業における成長経営実現に向けた連続的M&A及びPMI成功要因調査事業」のオンラインセミナーを開催しました。

注目すべきは、テーマが「M&Aをどう成約させるか」ではなく、「M&Aの後をどう経営するか」に移っている点です。会社を買った後、従業員との信頼をどう築くか、業務フローをどう統合するか、企業文化の違いをどう乗り越えるか。こうしたPMI(Post Merger Integration:経営統合プロセス)の重要性が、現場でようやく広く認識され始めています。PMIの実践的な進め方については、「中小企業の事業承継・M&A後の統合プロセス(PMI)|長期的な成功のための実践的アプローチ」で詳しく解説しています。

セミナーでは、「2030年・100億企業」を目標に連続的なM&Aを実行してきた株式会社マエダハウジングが登壇。買収基準の設定から、現場の心をつかむPMIの型まで、実体験に基づく知見が共有されました。

中小企業庁は2022年に「中小PMIガイドライン」を策定しており、PMI分析ワークシート・アクションプラン・統合方針書という3つの実践ツールを無料で公開しています。M&Aを検討中の方はもちろん、すでに承継後の会社を経営している方にも参考になる内容です。

出典:中小企業庁「令和7年度『中小企業における成長経営実現に向けた連続的M&A及びPMI成功要因調査事業』セミナーを開催します」(2026年3月12日)
https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/31640/
出典:中小企業庁「中小PMIガイドライン」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/sme_pmi_guideline_course.html


成功事例:100年続く老舗の味を守る――福井県・和菓子メーカーの第三者承継

福井県の和菓子メーカー・株式会社恵比須堂(現えびす堂)は、大正6年(1917年)創業の老舗です。羽二重餅や「けんけら」で知られるこの会社の社長・中道直氏は、60歳を過ぎたころから経営の限界を感じ始めていました。「以前のような攻めの経営ができなくなってきた」と感じた中道氏は、自身の家族や親族に後継者を求めたものの見つからず、2015年ごろ福井商工会議所へ相談に訪れました。

紆余曲折を経て、福井県事業引継ぎ支援センターのマッチングにより引継ぎ先として現れたのが、障害者就労支援を手掛ける有限会社ワークハウスの33歳の代表・嶋田氏でした。業種もまったく異なる組み合わせでしたが、双方が腹を割って話し合い、中道氏が帳簿を含む全情報をオープンにしたことで信頼関係が生まれます。最初の面談からわずか5ヶ月で株式譲渡契約が締結されました。

成約後も中道氏は、「けんけら」の製法技術を嶋田氏の会社スタッフに直接指導し、取引先にも同行。嶋田氏はこう語っています。「通常、M&Aは引き継いだらおしまいですが、中道さんはフォローの域を超えて助けてくれる」。

従業員の雇用と看板商品の技術が守られ、嶋田氏のもとで「けんけら」の新商品開発も動き出しました。老舗の味が、縁もゆかりもなかった33歳の経営者に引き継がれ、さらに発展しようとしています。

この事例が示すのは、「誰に引き継ぐか」よりも「どう引き継ぐか」が、承継の成否を左右するということです。早期に相談窓口を訪れ、条件を明確にして臨んだことが、スピーディーかつ円満な成約につながりました。

出典:事業承継・引継ぎポータルサイト「株式会社恵比須堂」事例紹介
https://shoukei.smrj.go.jp/case/case-third_party_inherited/case-third_party_inherited-06.html

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