後継者不在率50.1%の現実と3つの選択肢
「後継者がいない」と感じているのは、ご自身の会社だけではありません。帝国データバンクの最新調査によれば、2025年の後継者不在率は50.1%。日本の中小企業の約半数が、いまも後継者を決めかねている状況です。
ただ、この数字をどう受け止めるかで、これからの動き方が大きく変わります。「半数も不在」と読むのか、「半数はすでに動いた」と読むのか。実は、数字の裏では事業承継の構造そのものが、これまでとは違う形に変わりはじめています。
本記事では、後継者不在率の定義から最新データの読み解き、業種別・地域別の格差、そして経営者の方が今とれる現実的な選択肢まで、公的データを軸にお伝えします。
目次
後継者不在率とは何か
後継者不在率とは、調査対象企業のうち「後継者が決まっていない」と回答した企業の割合のことをいいます。帝国データバンク(=企業情報を扱う民間調査会社)が毎年公表しており、日本の事業承継の進み具合を測る代表的な指標となっています。
調査の対象と算出方法
帝国データバンクの調査では、全国約27万社の信用調査データから後継者の有無を集計しています。「決まっている」「不在」「未定」という回答のうち、不在・未定をあわせて「不在率」として算出する仕組みです(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。

なぜこの指標が注目されるのか
不在率は、廃業リスクや黒字廃業(=利益が出ているのに引き継ぎ手がなく会社をたたむこと)の予兆を映す数字でもあります。皆さまの会社では、5年後・10年後の経営を託す方が、すでにイメージできているでしょうか。
・後継者不在率は、後継者が未定の企業の割合を示す指標
・帝国データバンクが約27万社の調査をもとに毎年公表
・廃業や黒字廃業のリスクを早期に把握する手がかりとなる
2025年最新データの推移
2025年の後継者不在率は50.1%。前年から2.0ポイント低下し、7年連続で前年水準を下回りました。コロナ前の2019年と比べると約15ポイントの改善で、調査開始以来の最低水準です(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。
過去最低を更新した背景
不在率が下がった背景には、コロナ禍以降に経営者の方々が「先送りできない」と感じはじめた事情があります。事業承継・引継ぎ補助金の拡充や、中小企業庁による「中小M&Aガイドライン(第3版)」の整備も後押しとなりました。
改善ペースの鈍化に注意
ただ、改善幅は前年より縮小しています。残された不在企業の多くは、後継者選びの難易度が高い小規模企業や、業種特性の強い会社が中心です。「年々下がっているから自社も大丈夫」とは読めない局面に入っています。

2025年の不在率50.1%は、過去最低を更新した一方で、残された不在企業は「決めたくても決められない」事情を抱えるケースが多く、より早い行動判断が求められています。
業種別・地域別の格差
不在率は全国一律ではありません。業種・地域によって、深刻さの度合いが大きく異なります。
業種別の傾向
2025年も7業種すべてで不在率60%を下回り続け、建設業は57.3%で全業種中最も高水準です。技術や許認可の引き継ぎに時間を要する業種ほど後継者選定に苦労しています(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。
地域別の傾向
都道府県別では、三重県が33.9%で5年連続の最低水準。一方、秋田県は73.7%と全国唯一の70%超え、地方ほど不在率が高い構造が続いています。若年層の流出と高齢経営者の集中が、地方の不在率を押し上げる要因です。
地域差を整理すると次のとおりです。
| 区分 | 不在率の傾向 | 背景 |
|---|---|---|
| 三大都市圏 | 比較的低い | 人材流入・M&A候補の多さ |
| 地方都市 | 中程度 | 親族外承継の選択肢が広がる |
| 人口減少地域 | 高い | 後継候補の母数自体が縮小 |
後継者不在の主な原因
では、なぜ後継者は決まらないのか。原因は大きく3つに整理できます。
少子高齢化と親族の意欲低下
子の数が減り、子世代がすでに別の職業を選んでいるケースが増えています。「子に継がせるのが当然」という前提が崩れたことが、不在率の構造的な根っこにあります。
個人保証と税負担への不安
経営者保証(=会社の借入に経営者個人が連帯保証する仕組み)や、株式の相続税負担が、後継者の引き受けをためらわせます。とくに親族外への承継では、個人保証の引き継ぎがハードルとなりがちです。
準備不足と情報の不足
中小企業庁の調査では、事業承継の準備に着手していない経営者が依然として一定数存在することが示されています。準備期間は5〜10年が目安とされており、気づいたときには時間が足りないという状況になりかねません。
後継者難倒産は、2024年通年で477件と過去最多を更新しました(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者難倒産』動向調査(2024年)」)。準備が間に合わず、事業を残す機会を失う事例が現実に増えています。
私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではなく、自社グループに迎え入れる譲渡先として活動しています。譲渡をご検討中の経営者の方からのご相談をお待ちしています。
「不在率=危機」は本当か
「半数以上が後継者不在」という見出しを見ると、危機感が先に立ちます。しかし、データの裏側を見ると、この読み方は半分しか当たっていません。
不在=廃業ではない
後継者が現時点で「未定」であっても、最終的にM&Aや内部昇格で承継が成立するケースは増えています。不在率は静的な数字ではなく、これから動かせる余地のある数字と見るほうが現実的です。
むしろ「動かなかった」リスクのほうが大きい
本当のリスクは、不在率の高さそのものではなく、「決まっていない」状態で経営者が高齢化し、判断力や交渉力が落ちていくことです。皆さまの会社では、いつまでに方向性を出すと決めていらっしゃいますか。
脱ファミリー化の進行
2025年データの中で、もっとも構造的な変化を示しているのが、就任経緯別の内訳です。
内部昇格が同族承継を逆転
2025年は「内部昇格」が34.4%となり、「同族承継」の32.9%を上回りました(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2025年)」)。これは、戦後の中小企業が前提としてきた「親から子へ」の承継モデルが、統計上はもう主役ではないことを意味します。
M&A・外部招聘の存在感
M&Aほかが20.5%。内部昇格・M&A・外部招聘など、血縁に縛られない承継を合わせると6割超を占めています。「親族で継がない=失敗」ではなく、「血縁に縛られない承継こそ標準形になりつつある」という構造変化です。
独自の読み解き
このデータを別の角度から読むと、いま動こうとしている経営者の方は「マイナーな選択肢」を選んでいるのではなく、すでに過半数が選んでいる主流ルートに乗ろうとしている、という構図が見えてきます。後ろめたさを感じる必要のある選択ではない、ということです。

・内部昇格34.4%が同族承継32.9%を逆転(2025年)
・血縁に縛られない承継が合計で6割超を占める
・「親族外承継」はもう特例ではなく、主流ルート
解決の三つの道筋
後継者不在の解消には、現実的に3つのルートがあります。自社の状況に合わせて、どこに重心を置くかを決めることが第一歩です。
親族内承継
子・配偶者・兄弟姉妹に引き継ぐ伝統的なルート。事業承継税制(=一定要件下で株式の相続税・贈与税の納税が猶予される制度)の活用で、税負担を抑えられる可能性があります。
従業員・親族外承継
役員・従業員への内部承継です。経営理念や顧客関係をそのまま引き継ぎやすい一方、株式取得資金や個人保証の扱いが課題になります。中小企業庁による「経営者保証ガイドライン」の活用が、解決の鍵となるケースもあります。
M&Aによる第三者承継
親族・社内に候補がない場合に有力な選択肢となります。会社や事業を別の企業へ譲渡する方法で、近年は中堅・中小企業のM&A件数が継続的に増加しています。
3つの道筋を比較する際は、次の順で確認すると整理しやすくなります。
-
1
親族内に意思のある候補がいるかを率直に確認する
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2
社内幹部に引き受け可能性があるか、株式取得・保証込みで検討する
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3
2つで難しい場合、第三者承継(M&A)の譲渡先候補を比較しはじめる
詳しい流れは事業承継の流れもご参照ください。
動き出すべきタイミング
「もう少し様子を見てから」と先送りにしたくなる気持ちは自然なものです。ただ、データはやや厳しい現実を示しています。

準備期間は5〜10年
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」では、円滑な承継には5〜10年の準備期間が望ましいとされています。後継者の育成、関係者との合意形成、株式や保証の整理に、それだけの時間がかかるという前提です。
年代別データが示す警告
帝国データバンクの2025年調査では、50代の経営者でも不在率が58.3%と過半数を超えています。働き盛りの世代でさえ後継者選びが進んでいない現実があり、70代以降に着手した場合、選択肢は急速に狭まります。
判断を遅らせるコスト
判断が遅れるほど、譲渡条件は不利になりやすく、廃業も視野に入りはじめます。実際の事例についてはSDアドバイザーズの実績・事例紹介ページをご覧いただくと、早期に動かれた経営者の判断材料が見えてきます。
私たちは仲介者ではなく、お迎えする側です。経営者様のお考えと、私たちのグループとの相性を、一緒にじっくり見極める時間を大切にしています。
私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。
「どのような会社にバトンを渡すべきか」を検討されている段階でも、一度お話を聞かせてください。譲渡を急かすことはいたしません。
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。
※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。