経営者の高齢化60.7歳、今すぐ動くべき理由
「もう70代になってしまった、今から動いても遅すぎるのではないか」。そう感じている経営者の方は、決して少なくありません。
帝国データバンクの調査によれば、全国の社長平均年齢は60.7歳に達し、34年連続で過去最高を更新しました(出典:帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2024年)」)。高齢化は、すでに「特殊な悩み」ではなく、日本の経営者の標準像になっています。
本記事では、経営者の高齢化が招くリスクと、70代・80代でも間に合う引退準備の進め方、そして引退後の生活設計までを、公的データを軸に整理します。読み終えるころには、次の一歩が具体的に見えているはずです。
目次
経営者高齢化の現状
「60.7歳」という数字の背景を、まず確認してみましょう。皆さまの会社の経営者像は、平均像と比べていかがでしょうか。
平均年齢60.7歳の意味
帝国データバンクの「全国『社長年齢』分析調査(2024年)」によれば、2024年の社長平均年齢は60.7歳でした。1990年からの34年連続で過去最高を更新した数字です。
中央値で見ると、もっと急峻な動きが読み取れます。中小企業庁の中小企業白書では、中小企業経営者の年齢分布の中央値が、1995年の47歳から2015年には66歳へ移動したと示されています(出典:中小企業庁「中小企業白書(2020年版)」)。20年で19歳上昇した計算です。
60歳以上が半数を超えた
同じ帝国データバンク調査では、社長のうち60歳以上が51.7%、50歳以上が81.7%を占めます。50代以下の経営者は、全体の約2割しかいない計算です。
「自分だけが高齢経営者ではない」——この事実は、安心材料というより、社会全体の課題が進行している証拠として読み替えるのが現実的です。
・社長平均年齢は60.7歳、34年連続で最高更新
・60歳以上が51.7%、50歳以上では81.7%
・経営者の高齢化は、もはや少数派の悩みではない
高齢化が進む3つの背景
なぜ、ここまで高齢化が進んだのでしょうか。理由は単純ではありません。複数の要因が重なっています。

後継者候補の減少
最大の要因は、後継者となる若手の減少です。中小企業庁の試算によれば、2025年時点で70歳を超える中小企業経営者は約245万人。そのうち約127万人が後継者未定と見込まれています(出典:中小企業庁2019年公表資料)。
子どもが家業を継がない、という選択が一般化したことも背景にあります。
平均寿命の延びと意欲
健康寿命が延びたことで、「まだ働ける」と感じる経営者が増えました。これ自体は前向きな変化です。ただし、判断力と体力のピークは別物であり、70代後半から急速に変化が訪れるとの報告もあります。
廃業・売却ためらい
帝国データバンクの2024年調査では、社長交代率は3.75%と4年連続で低下しました。「自分の代で会社を畳むのは申し訳ない」「売却に踏み切れない」というためらいが、結果的に在任期間を長期化させています。
高齢化は意欲の問題だけではなく、構造的な後継者不足によって経営者本人の意思とは無関係に進んでいる現象です。「自分はまだ大丈夫」という感覚と、客観的な数値のあいだに、ギャップが生まれていないかを定期的に振り返る場面が増えています。
・後継者未定の70歳超経営者は127万人にのぼる
・社長交代率は3.75%と4年連続で低下
・本人の意思に関わらず、構造的に高齢化が進む
高齢化のリスクは何か
ここで一つ、問いかけたいことがあります。「自分が今、突然倒れたら、会社はどうなるか」——具体的に答えられる経営者の方は、どれほどいらっしゃるでしょうか。
判断力の鈍化と組織硬直
加齢にともなう判断力の低下は、自覚しにくい変化です。経営判断のスピードが鈍り、若手の意見が通りづらくなる。組織の硬直化は、業績悪化の前段階として現れます。
「最近、新しい取り組みを始めていない」「社内会議で同じ顔ぶれが続いている」——こうした兆候が見え始めたら、経営者本人の年齢的影響を疑うサインかもしれません。
病気・死亡で倒産も発生
もっとも深刻なリスクは、突然の病気・死亡です。帝国データバンクの集計では、2024年に「経営者の病気・死亡」を主因とする倒産が316件判明し、過去最多を記録しました(出典:帝国データバンク2025年公表データ)。
経営者一人に意思決定が集中している中小企業では、本人不在の瞬間に取引・金融・人事のすべてが止まります。承継準備が間に合わなかった結果、会社そのものが消えるケースが、年々増えているということです。

高齢化リスクは「いつか起こる」ではなく「いつ起きてもおかしくない」段階に入っています。経営者の病気・死亡を主因とする倒産316件という数字は、抽象的な警告ではなく、毎年実際に発生している事象を表しています。
・判断力低下は自覚しにくい組織リスク
・経営者の病気・死亡による倒産は2024年316件で過去最多
・備えのない会社は、突然の事態で機能停止する
動けるうちに進める準備
リスクを並べてしまいましたが、ここから先は「では、どう動くか」の話です。準備は、動けるうちにしか進められません。
承継には5〜10年必要
事業承継には、一般に5〜10年の準備期間が望ましいとされています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」)。後継者の育成、株式の整理、取引先・金融機関との調整。これらを丁寧に進めるには、相応の時間が要るからです。
ただし、これは「ゼロから始める場合」の目安です。状況によっては短縮できます。
取れる選択肢の整理
承継の方法は、大きく分けて4つです。下表に、概要と想定期間をまとめました。
| 承継方法 | 概要 | 想定期間 |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子・親族へ事業を引き継ぐ | 5〜10年 |
| 社内承継 | 役員・従業員に承継 | 3〜7年 |
| M&A・第三者承継 | 外部企業へ譲渡 | 1〜3年 |
| 廃業 | 事業を清算 | 半年〜1年 |
それぞれ、必要な準備期間も、税負担も、関係者への影響も異なります。「どれが正解」を探すのではなく、自社の状況に合うものを選ぶ作業です。
承継の流れ全体は、SDアドバイザーズの事業承継フローでも整理しています。

・親族・社内承継は5〜10年が目安
・M&Aは比較的短期間で進められる
・選ぶのではなく、自社の状況から逆算する
私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではなく、自社グループに迎え入れる譲渡先として活動しています。譲渡をご検討中の経営者の方からのご相談をお待ちしています。
70代でも間に合う条件
「自分はもう70代。手遅れではないか」と感じている方に、少し意外な事実をお伝えします。
高齢でも成約は珍しくない
帝国データバンクの2024年調査では、社長交代時の平均年齢は68.6歳、新社長の平均年齢は52.7歳でした。交代による若返り幅は15.9歳。つまり、70歳前後で承継・交代を実現している経営者は、けっして特殊な存在ではないということです。
同調査によれば、新社長の就任経緯は同族継承38.6%、内部昇格37.6%、出向11.7%と分散しています(出典:帝国データバンク2024年調査)。経路は一つに限られていません。
整っているべき3つの要素
ただし、年齢が高くなるほど「準備が整っているか」が成否を分けます。70代以上で短期間に承継・譲渡を成立させるには、最低でも以下の3点が要件となります。
-
1
直近3期の決算が読める状態——粉飾や曖昧な処理がなく、買い手・後継者が冷静に判断できる数字に整っていること。
-
2
株式の所有関係が整理されている——分散していないか、過去の相続手続きが完了しているか、名義株が残っていないか。
-
3
属人化していない事業——経営者個人にしかわからない取引・人脈・ノウハウが、最低限文書化されていること。
「年齢」より「準備」のほうが成否を分ける——これが、現場の実感に近い構造です。
実際に成立した譲渡の事例は、SDアドバイザーズの実績・事例紹介でもご覧いただけます。
・社長交代は平均68.6歳前後で実現するケースが多数
・継承経路は親族・内部・外部に分散している
・成否を分けるのは年齢ではなく、準備の整い方
引退後の生活と収入設計
引退後、収入はどう変わるのか。生活はどう続くのか。承継の議論では後回しになりがちな論点ですが、実はここが固まらないと判断が前に進みません。
引退後の収入はどうなる
引退後の主な収入源は、役員退職金、譲渡対価、不動産・株式からの所得、年金の4つです。中小企業オーナーの場合、特に役員退職金の設計が老後資金の中核となります。
譲渡対価は、譲渡方式(株式譲渡・事業譲渡など)によって税負担が変わります。手取り額の試算は、税理士・公認会計士への相談が前提です。
生きがいと家族との関係
経営から離れた後、自分は何をして過ごすのか。家族との時間は十分か。意外なほど、ここで戸惑う経営者が多いと言われています。
「会社が自分の人生だった」——その状態のまま引退すると、空白に苦しむ場面に直面することがあります。引退後の活動(顧問・社会貢献・趣味など)も、譲渡時期と合わせて構想しておくと、判断のブレが減ります。
引退後の収入設計と過ごし方は、承継方法を決める前に描いておくほうが、結果的に判断が速くなります。「いくら必要か」「何をして過ごすか」の輪郭が見えると、譲渡対価・退職金の目標値も自然に定まります。
・引退後の主な収入は退職金・譲渡対価・年金の組み合わせ
・税務は専門家への確認が前提
・引退後の過ごし方を先に描くと、判断の軸が固まる
突然の事態に備える仕組み
「もし明日、自分が動けなくなったら、会社の意思決定は誰がするのか」——この問いに即答できる体制が、最後の備えです。
株式・金融の整理
経営者本人が亡くなった場合、株式は相続財産となり、相続人全員の合意がないと議決権が行使できなくなります。これは経営の即時麻痺を意味します。
事前に遺言書の作成、株式の事前贈与、種類株式の活用などを検討しておけば、混乱を避けられます。金融機関の取引名義・連帯保証も、早めの整理が望ましい項目です。
緊急時対応者の指定
日々の経営を担う人物を、書面で指定しておく仕組みも欠かせません。代表権の代行、決裁権限の委譲、銀行口座の操作権限——これらを明文化しておくと、不在時のロスが最小化されます。
・遺言書(公正証書遺言が望ましい)の作成
・株式の所有関係の確認と必要な整理
・代表代行者・決裁代行者の文書での指定
・金融機関への緊急時連絡先の届出
これらは、承継の方針が固まる前から進められる準備です。
・株式の相続は経営麻痺の最大要因
・遺言・贈与・種類株式で事前整理が可能
・代表代行者の文書指定で、不在時のロスを下げられる
高齢経営者の最初の一歩
ここまで読まれた方は、「動かなければ」という気持ちが強くなっているかもしれません。最後に、今日から始められる現実的な3ステップを整理します。
今日からできる3つの行動
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1
自社の決算3期分を整理し、客観的に確認する——買い手・後継者が読める形に整える、最初の一歩です。
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2
株式の所有関係と相続関係図を1枚にまとめる——誰が何株を持っているかを可視化することで、議論の出発点ができます。
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3
譲渡・承継の選択肢を、家族・税理士と話す——一人で抱え込まず、関係者を巻き込む段階に進みます。

「考える前に、書き出す」——これが、最初の現実的な行動です。準備が一段階進めば、選択肢は確実に広がります。
承継の流れ全体は事業承継フローのページ、譲渡先候補としての実績は実績・事例紹介ページで確認できます。
・決算整理・株式関係図・関係者対話の3ステップから始める
・「考える前に、書き出す」が最初の現実的な行動
・準備が整えば、選択肢は広がる
私たちは仲介者ではなく、お迎えする側です。経営者様のお考えと、私たちのグループとの相性を、一緒にじっくり見極める時間を大切にしています。
私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。
「どのような会社にバトンを渡すべきか」を検討されている段階でも、一度お話を聞かせてください。譲渡を急かすことはいたしません。
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。▶ 実績・事例紹介はこちら
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