後継者のいない会社がM&A・事業承継を選ぶ理由

「後継者がいない」という現実を長年抱えながら、どう決断すればよいかわからないまま時間だけが過ぎていく——そうした経営者の方は、日本全体で半数以上にのぼります。後継者不在を理由に廃業を考えているなら、ぜひ読み進めてください。

結論からお伝えします。後継者がいない会社でも、M&A(第三者承継)によって事業・従業員の雇用・取引先との関係を守りながら、会社の未来を続けることができます。「後継者がいないからM&Aは無理」という思い込みをお持ちの方は多いですが、実際には後継者不在だからこそ第三者承継が成立しやすいケースは少なくありません。

この記事では、後継者のいない会社がなぜM&Aを選ぶのか、買い手から見てどのような会社が評価されるのか、そして経営者が今からとれる具体的な行動について解説します。

後継者不在が深刻な理由

後継者不在率53.9%の衝撃

帝国データバンクが2024年に公表した「全国企業後継者不在率動向調査」によると、国内中小企業の後継者不在率は53.9%でした。約2社に1社が後継者を確保できていない計算です。

さらに深刻なのは年代別の傾向です。経営者が70代に入ると承継の実現可能性が急速に下がります。計画していた承継が健康状態の悪化や後継者の辞退によって断念に至るケースも出てきます。経営者の平均年齢は60.7歳(出典:帝国データバンク「社長年齢分布調査」)と高齢化が進んでおり、「もう少し待ってから考えよう」という先送りが選択肢を狭めていきます。

皆さまの会社では、後継者についての話し合いをすでに進めているでしょうか。

親族承継が難しくなった背景

かつては「子が継ぐ」という親族内承継が主流でしたが、近年は大きく変化しています。子どもが別のキャリアを歩んでいたり、経営への関心を持っていなかったりするケースが増えており、後継者候補として「非同族」が指名される割合が増えています。帝国データバンクの同調査では、後継者に指名された人物のうち非同族が首位を占めており、脱ファミリー化が鮮明です。

後継者問題はもはや「家庭の問題」ではありません。経営者個人の努力だけでは解決できない構造的課題として、国全体で取り組みが進んでいます。

📋 この章のまとめ
・国内中小企業の53.9%が後継者不在(帝国データバンク2024年)
・経営者の平均年齢は60.7歳で高齢化が加速
・親族内承継は減少し、第三者への承継が増えている

廃業が招く3つの損失

「後継者がいないなら廃業しかない」——そう思う経営者は少なくありません。しかし廃業が本当に「楽な選択」かというと、そうではありません。廃業には多くの経営者が事前に想定していなかった3つの重いコストが伴います。

経済的コストは想定より大きい

廃業には清算費用・退職金・在庫処分・借入返済が一度に発生します。従業員10名前後の中小企業でも、合計数百万円から数千万円の費用が現実に必要になることがあります(出典:中小企業庁「中小企業白書 2023年版」)。

一方でM&Aを選んだ場合、株式譲渡対価として売却収益を受け取れる可能性があります。廃業コストと承継の収益を比較すると、M&Aを選んだほうが経営者個人の手元に残るお金が増えるケースは決して珍しくありません。

従業員と取引先を守れない

廃業を選ぶと、長年勤めてくれたスタッフの雇用が一瞬で失われます。製造技術を持つ職人、地域に根ざした営業担当者、教育を重ねた幹部社員——その人たちの生活が廃業の瞬間に不安定になります。

取引先との関係も同様です。数十年かけて積み上げてきた信頼関係は、廃業によって一度に失われます。廃業後に取引先から「あの社長は急に店を閉めた」と思われる痛みは、想像以上に重いものです。

個人保証が残り続けるリスク

廃業後も経営者の個人保証(連帯保証)が残り、借入が返済されるまで個人の資産が担保として拘束され続けます。「廃業すればすっきりする」は誤解で、金融機関との債務整理が完了するまで経営者個人の生活に影響が続く場合があります。

⚠️ 注意
廃業は不可逆の選択です。廃業後に「M&Aにすればよかった」と気づいても、取引先・技術・ブランドは戻りません。廃業を考えている場合でも、まず承継の可能性を専門家に確認することをお勧めします。
📋 この章のまとめ
・廃業コストは清算・退職金・借入返済で数百万〜数千万円かかる
・廃業すると従業員雇用・取引先関係が一瞬で失われる
・個人保証は廃業後も継続し、経営者の生活に影響が残る

後継者不在でも売れる理由

「後継者がいないと、買い手も見つからないのでは」——この思い込みを持っている経営者は多いです。これは本当でしょうか。

実は、答えは「ノー」です。後継者不在そのものはM&Aの成立を妨げる要因になりません。

買い手が求めるのは成長余地

買い手企業が会社を探すとき、完成された「優良企業」だけを探しているわけではありません。むしろ「成長余地のある企業」を求めるケースが多く見られます。後継者不在で先行きが不透明なだけで、事業自体は堅調、技術や顧客は十分にある——そのような会社は、買い手にとって有望な案件です。

中小企業庁が2021年に策定した「中小M&A推進計画」では、M&A成約件数を段階的に拡大する目標が明示されており、事業承継M&Aへの関心を持つ買い手のすそ野は確実に広がっています。

地方・ニッチ業種にも買い手はいる

「地方の小さな会社に買い手はいない」というイメージも根強いですが、実態は異なります。大手グループが地方に拠点を確保したい、同業他社が技術やエリアを取得したい、個人投資家が地域で経営を始めたい——こうした動機を持つ買い手は全国に存在しています。

事業承継・引継ぎ支援センターへの相談件数は2022年度に過去最多を更新しており(出典:中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センターの活動状況について」)、マッチングの機会は以前より大幅に増えています。

📌 ポイント
「後継者がいない」という事実はM&Aを諦める理由になりません。後継者問題を正直に伝えたうえで、事業の強みと将来性をきちんと示すことが成約への第一歩です。
📋 この章のまとめ
・後継者不在はM&Aの成立を妨げる要因にならない
・買い手は「完成品」ではなく「成長余地」を求めている
・地方・ニッチ業種でも買い手は存在する

買い手が見る評価ポイント

買い手が会社を評価するとき、何を重視するのでしょうか。財務数値だけが評価されると思われがちですが、実際には「財務以外」の要素が成否を分けることが多いです。

財務より重視される無形資産

下表は、買い手企業が評価する主な無形資産をまとめたものです。財務数値より、こちらの要素が最終的な成約可否に影響するケースが多いです。

評価項目 具体的な内容
顧客・取引先 長期継続取引のある得意先、特定業種や業界へのアクセス
技術・ノウハウ 製造技術、独自の工程管理、保有する許認可・資格
人材 熟練の職人・スタッフ、定着率が高い組織
立地・拠点 物流上の優位性、地域でのブランド認知度

マイナス評価になりやすい要素

一方で、次の状態にある会社は評価が下がりやすくなります。ただし「だから売れない」ではなく、「事前に改善すれば評価が変わる課題」として捉えてください。

  • 社長1人に業務が集中している「属人化」の状態
  • 帳簿と実態が一致していない決算書
  • 主要取引先が1社に偏っている集中リスク
  • 従業員の定着率が著しく低い
📋 この章のまとめ
・買い手は財務数値より「顧客・技術・人材・立地」を重視する
・属人化・帳簿の不一致・集中リスクはマイナス評価になる
・マイナス要素の多くは事前改善で解消できる
「廃業ではなく、引き継ぎを検討したい——その前に、譲渡先選びから一緒に考えませんか。」

私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。

後継者がいない会社の将来を、廃業ではなく承継という形で守りたいとお考えの経営者の方は、まずお話を聞かせてください。

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承継後に守られたもの

M&Aで会社を譲渡した後、会社がどうなるかを不安に感じる経営者は多いです。「買い手が勝手に社名を変えるのでは」「従業員が解雇されるのでは」——そうした懸念は現実的でしょうか。

ここで多くの経営者が驚く事実があります。M&A成約後も、従業員の雇用・社名・取引先関係のほとんどは維持されているのです。

雇用維持率は8割超

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2023年9月改訂)の掲載データによると、中小M&A成約後において従業員の雇用が維持された割合は8割を超えています。買い手企業は事業の継続を目的としてM&Aをおこなっており、人材の確保が目的の一つであることも多く、積極的に雇用を守ろうとするケースがほとんどです。

「従業員を路頭に迷わせたくない」という経営者の懸念は、M&Aの選択によって多くの場合解消されます。廃業と比較したときに最も大きな違いがここにあります。

社名・取引先が守られるしくみ

株式譲渡(会社ごと譲渡する方式)を選ぶと、会社の法人格はそのまま引き継がれます。社名を変更するかどうかは、最終契約前の交渉段階で経営者側が要望として示せます。長年育ててきた社名を残したいという条件で合意に至る事例は少なくありません。

取引先との契約も、株式譲渡であれば原則そのまま継続されます。廃業であれば一斉に消える取引関係が、承継では引き継がれます。これが事業の継続価値が守られるM&Aの強みです。

実際の承継事例については、SDアドバイザーズの実績・事例紹介ページもご参照ください。

✅ 実践ポイント
M&Aの条件交渉では「従業員の雇用維持」「社名の継続」「取引先への影響最小化」を明確に要望として伝えられます。これらは基本合意書・最終契約書に盛り込める条件です。
📋 この章のまとめ
・M&A後の雇用維持率は8割超(中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」)
・株式譲渡を選べば社名・取引先契約がそのまま引き継がれる
・雇用・社名・取引先は条件交渉で守れる

会社の磨き上げ方法

「自社にそれほどの価値があるのか」と疑問に感じる経営者は多いです。しかし価値は見せ方で大きく変わります。「磨き上げ」と呼ばれる整理作業を事前に進めることで、買い手に会社の本当の価値を伝えやすくなります。

強みを数字で可視化する

買い手が最初に見るのは決算書ですが、それだけが評価の全てではありません。以下の情報を整理しておくことで、会社の価値をわかりやすく伝えられます。

  • 1

    主要取引先のリストと継続年数(長期取引は安定収益の証拠)

  • 2

    保有する許認可・資格・独自技術の一覧

  • 3

    従業員の在籍年数・スキルマップ(人材の厚みを示す)

  • 4

    自社の強みを一文で表した会社概要(買い手が理解しやすくなる)

属人化の解消が評価を上げる

「社長がいないと会社が回らない」という状態は、承継後に買い手が最も苦労する問題です。業務マニュアルの整備、幹部社員への権限委譲、重要顧客関係の共有——これらを事前に進めることで、会社の移譲しやすさ(企業価値)は大きく向上します。

📌 ポイント
磨き上げに完成形はありません。まず現状の書類や強みを専門家に見せ、「どこを優先して改善するか」を相談することが最も効率的な第一歩です。
📋 この章のまとめ
・取引先リスト・許認可・人材情報の整理で評価が上がる
・属人化の解消が会社の移譲しやすさを高める
・磨き上げの方向性は専門家相談で効率的に決まる

M&Aまでの準備と期間

「M&Aにはどのくらい時間がかかるのか」という疑問はよく寄せられます。結論から言えば、準備状況と相手次第で大きく変わります。

平均7〜8ヶ月の内訳

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」によると、中小M&Aの成約期間は最短2ヶ月から最長3年以上まで幅があり、平均は7〜8ヶ月程度です。成約期間を決める主な要因は次の3つです。

  • 会社の準備状況(書類整備・磨き上げの進捗)
  • 買い手候補の数と質(マッチング先が見つかるスピード)
  • 経営者と買い手双方の意思決定スピード

急いで進めた結果、不利な条件での成約になるケースも見受けられます。早期に準備を始めて余裕を持って進めることが、最善の選択です。

最初に準備する書類3点

まず揃えておきたい書類として、下表の3点が基本です。これらがあれば、最初の専門家相談を始められます。

書類 用途
直近3期分の決算書 財務状況の確認・企業価値算定の基礎資料
株主名簿 株式の保有状況確認(M&A手続きの前提)
会社概要資料 事業内容・強み・従業員数・主要取引先の説明

M&Aの全体的な流れについては、こちらのページで詳しく解説しています

📋 この章のまとめ
・成約まで平均7〜8ヶ月(最短2ヶ月・最長3年以上)
・準備状況がスピードを左右する最大要因
・まず決算書・株主名簿・会社概要の3点を整備する

まず相談すべき窓口

「どこに相談すればいいかわからない」——これが行動を止める最大の理由の一つです。相談窓口には公的機関と民間があり、最初にどちらを使うかで進め方が変わります。

最初は公的機関で情報収集を

まず活用したいのが、中小企業庁が全国47都道府県に設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」です。相談料は無料で、中立的な立場からアドバイスを受けられます。相談内容は秘密保持義務のもとに管理されるため、「情報が外部に漏れないか」という心配は不要です。

センターでは、承継方法の整理・専門家の紹介・マッチング支援まで一貫してサポートを受けられます。民間のM&A仲介会社と異なり、営業目的での接触はありません。

譲渡先を見つける次のステップ

公的センターで基本情報を整理した後は、買い手候補(譲渡先)を探す段階に進みます。最終的に重要なのは「価値観・従業員への方針が合う相手を選ぶこと」です。相手の規模や知名度だけでなく、自社の文化や従業員を大切にしてくれるかどうかを、面談を通じて見極めてください。

✅ 実践ポイント
まず「事業承継・引継ぎ支援センター」に電話1本で予約を取りましょう。持参するものは最新の決算書1期分だけで十分です。「廃業か承継か」を決める前に、まず情報を集める段階です。焦らず、話を聞いてもらうだけでも、次の道が見えてきます。
📋 この章のまとめ
・最初の相談先は公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター)が安心
・無料・中立・秘密保持で情報収集できる
・次のステップは買い手候補との面談と価値観の確認
会社を託す相手を選ぶ、その前のお話から。

私たちは仲介者ではなく、お迎えする側です。経営者様のお考えと、私たちのグループとの相性を、一緒にじっくり見極める時間を大切にしています。

「会社の未来を、誰に託すか」をお考えの経営者の方へ。

私たち4040 VISIONは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。

「どのような会社にバトンを渡すべきか」を検討されている段階でも、一度お話を聞かせてください。譲渡を急かすことはいたしません。

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監修:株式会社SDアドバイザーズ 事業承継グループ
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。▶ 実績・事例紹介はこちら ▶ 事業承継に対する想いはこちら

※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。

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代表取締役 高木栄児