事業承継 円滑化法とは?4つの支援措置を解説

「事業承継 円滑化法という言葉は耳にするものの、何がどう支援されるのか整理しきれていない」とお考えの方は多いと思います。法律名が硬く、自社で使えるのかどうかも判断しづらい。そんな相談をよくいただきます。

経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)は、2008年に施行された中小企業の事業承継を支える法律です。現在は4つの支援措置が用意されており、それぞれ別の角度から後継者問題を解決します。

本記事では、4つの支援措置の中身、適用要件、申請の流れ、そして使う前に知っておきたい注意点までを、50〜80代の経営者の皆さまが判断できる形で整理しました。

事業承継円滑化法の全体像

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を「税」「資金」「相続」「株主」の4方向から支える総合法です。正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(出典:e-Gov 法令検索)。略称として「経営承継円滑化法」「事業承継円滑化法」と呼ばれます。

立法の背景

2008年の施行当時、中小企業の経営者の高齢化が進み、相続税・贈与税の負担で会社をたたまざるをえない事例が問題視されていました。法律はこの「税の壁」「資金の壁」「相続の壁」を順次取り除く形で改正を重ねています。

改正の歴史

主な改正のタイミングは2018年の特例措置創設と、2021年8月2日の所在不明株主に関する会社法特例の追加です。皆さまの会社では、最後に法改正の影響を確認したのはいつでしょうか。

📋 この章のまとめ
・経営承継円滑化法は2008年施行の中小企業向け総合法
・現在は4つの支援措置(税制・金融・民法特例・会社法特例)
・2021年改正で所在不明株主の特例が追加された

4つの支援措置を整理する

経営承継円滑化法の支援措置は、目的別に4つに整理できます。下の表は、自社にどれが当てはまるかを判断する第一歩としてご覧ください。

支援措置 解決する課題 主な対象
①事業承継税制 贈与税・相続税の重い負担 親族・第三者への株式承継
②金融支援 承継時の資金調達難 買収資金・運転資金が必要な後継者
③遺留分の民法特例 他の相続人による遺留分主張 複数の相続人がいる経営者
④所在不明株主の会社法特例 連絡が取れない株主の株式 古い同族会社・歴史の長い会社

共通点があります。どの支援措置も、原則として都道府県知事の認定を受けることが利用の前提です(出典:中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」)。

📌 ポイント
4つすべてを必ず使う必要はありません。自社の課題に対応する1つ、または複数を組み合わせて利用します。

事業承継税制という選択肢

4つの支援措置のなかで最も注目されているのが事業承継税制です。後継者が先代から取得した非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税が、一定の条件のもとで猶予・免除されます。

一般措置と特例措置

制度には「一般措置」と「特例措置」の2つがあります。特例措置は2018年に時限的に創設され、対象株式の上限撤廃(一般措置は3分の2まで)と納税猶予割合100%(一般措置は80%)という拡充が行われました(出典:国税庁「法人版事業承継税制」)。

特例措置の利用期限

特例措置の適用を受けるためには、2026年3月31日までに特例承継計画を提出し、2027年12月31日までに実際の贈与または相続を行う必要があります(出典:中小企業庁・国税庁)。

⚠️ 注意
納税猶予はあくまで「猶予」であり、雇用維持要件や事業継続要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税額に利子税を加えた金額を一括納付するリスクがあります。

遺留分の民法特例の中身

遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことです。経営者が後継者である長男に自社株を集中して渡しても、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けると、株式を売って現金で支払う事態にもなりかねません。

除外合意と固定合意

遺留分の民法特例は、こうしたリスクから自社株を守る仕組みです。除外合意(後継者が贈与された株式を遺留分の対象から外す)と固定合意(後継者の貢献で上がった株式価値を遺留分の対象から外す)の2種類があります(出典:中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」)。

合意の手続き

合意が効力を持つには、推定相続人全員の合意に加え、経済産業大臣の確認家庭裁判所の許可が必要です。合意書を作っただけでは効力は生じません。

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金融支援の中身と利用条件

事業承継の現場では「事業承継税制で税は何とかなっても、買収資金や納税資金が足りない」という壁にぶつかることがあります。経営承継円滑化法の金融支援は、この壁を下げる仕組みです。

2つの支援策

金融支援は2本立てです。1つは日本政策金融公庫の特別融資(事業承継・集約・活性化支援資金)、もう1つは信用保証協会の保証枠拡大です(出典:日本政策金融公庫、中小企業庁)。

融資の上限と利率

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、限度額が最大7億2,000万円で、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内の返済期間が設定されています。認定経営革新等支援機関の支援を受け、経営者が55歳以上であれば特別利率②が適用されます(出典:日本政策金融公庫)。

✅ 実践ポイント
金融支援の認定要件は「先代経営者の死亡または退任に伴い、事業活動の継続に支障が生じている」こと。事前に都道府県の窓口に相談し、認定が見込めるか早めに確認しておきましょう。

所在不明株主の会社法特例

歴史の長い会社では、創業時に株を持たせた親戚や元従業員と連絡が取れなくなっているケースが珍しくありません。お気づきでしょうか。この「所在不明株主」は、事業承継の場面で大きな壁になります。

なぜ問題なのか

会社法では、所在不明株主の株式を会社が買い取る前に、原則として5年間の通知不到達などの要件を満たす必要があります。この5年が、事業承継のタイミングと合わないことが多いのです。

5年から1年への短縮

2021年8月2日施行の改正で、経営承継円滑化法はこの期間を5年から1年に短縮する特例を新設しました(出典:中小企業庁、改正経営承継円滑化法)。都道府県知事の認定を受けた中小企業のみが対象です。

📌 ポイント
4つの支援措置のうち、もっとも新しく、もっとも知られていないのがこの特例です。創業から数十年経った会社ほど、確認する価値があります。

認定の手続きと提出期限

4つの支援措置はいずれも、都道府県知事(または経済産業大臣)の認定を経て初めて使えます。手続きの流れを整理します。

共通の流れ

  • 1

    自社の課題と使いたい支援措置を特定する

  • 2

    顧問税理士・認定経営革新等支援機関に相談し、要件を確認する

  • 3

    必要書類(特例承継計画・株主名簿・登記事項証明書など)を準備する

  • 4

    本社所在地を管轄する都道府県の担当窓口へ申請する

  • 5

    認定後、5年間の年次報告(事業承継税制の場合)を継続する

期限がある特例

事業承継税制の特例措置は2026年3月31日までに特例承継計画を提出することが必須です。期限を過ぎると、一般措置(納税猶予80%・株式の3分の2まで)にしか進めません。

活用件数の推移が示すもの

制度の活用状況を見ると、現場の温度感が見えてきます。中小企業庁の公表値によると、法人版事業承継税制の特例措置は2018年の創設以降、年間平均で約3,000件の特例承継計画が申請されており、一般措置の時期(年250件程度)と比べて約12倍の利用に増えています(出典:中小企業庁・税制改正要望資料)。

2023年度は5,357件

とくに2023年度の申請件数は5,357件と過去最高水準。2026年3月の提出期限を意識した駆け込みが進んでいると読み取れます。

後継者不在率との関係

一方で、帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によると、全国の後継者不在率は50.1%(前年比2.0ポイント低下、7年連続の改善)。2025年の事業承継は内部昇格による比率が36.1%となり、同族承継(32.3%)を初めて上回りました(出典:帝国データバンク 2025年11月)。

つまり、円滑化法を実際に活用しているのは「親族外の後継者に株式を集中させたい会社」が増えているという構造が見えます。M&Aや内部昇格と組み合わせて使う制度として認識されてきている、と読み替えるのが現実的です。

使う前に知るべき落とし穴

「これだけ手厚い支援があるなら、すぐ使えばいい」と思われるかもしれません。本当にそうでしょうか。利用前に確認したい3つの注意点があります。

猶予の打ち切りリスク

事業承継税制で猶予された税は、雇用維持要件や事業継続要件を満たさなくなった瞬間、利子税を加えて一括納付する義務が生じます。長期にわたって縛りを受ける制度であることを忘れてはなりません。

5年間の年次報告

認定後5年間は、毎年都道府県へ年次報告を提出する義務があります。実務的な負担は決して軽くありません。

選択肢を狭めない

制度の活用にこだわるあまり、M&Aによる第三者承継やグループインといった選択肢を後回しにする例も見られます。円滑化法は「親族・社内に承継する」前提の制度。社外への譲渡を視野に入れている場合は、別の選択肢と並行検討するのが賢明です。

次に取るべき判断と行動

ここまでお読みいただいた経営者の皆さまにとって、次の一手は次のいずれかになるはずです。

✅ 実践ポイント
1. 親族・社内に承継したい場合
→ 顧問税理士・認定経営革新等支援機関に相談し、4つの支援措置のうちどれを使うか検討
2. 社外への譲渡も視野に入れる場合
→ 譲渡先候補との対話を始める(実際の譲渡プロセスの流れはこちら
3. 判断材料が足りない場合
→ 後継者の有無・自社株の評価額・相続人構成の3点を整理する

制度を使うか使わないかではなく、自社が「親族・社内承継」と「社外承継」のどちらの軸で進むのか。この方向性が定まってからの方が、円滑化法の議論は驚くほどスムーズに進みます。

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