事業承継のやることリスト42項目を時系列で整理

「事業承継、何から始めればいいか見えてこない」とお悩みの経営者の方は少なくありません。やるべき作業は40項目以上にのぼり、全体像を把握しないまま動き出すと、優先順位を誤りやすい領域です。

帝国データバンクの2024年「全国企業『後継者不在率』動向調査」では、国内企業の後継者不在率は52.1%でした(出典:帝国データバンク 2024年11月20日発表)。半数以上の経営者が、準備が進まないまま65歳・70歳を迎えているのが実態です。

本記事では、事業承継のやることを42項目に分解し、「今月」「3ヶ月以内」「1年以内」「3年以内」の時系列で整理します。年代別の優先順位の付け方や相談先の選び方まで、中小企業庁・帝国データバンクの公的データをもとにお伝えします。

事業承継のやること全体像

事業承継のやるべき作業は、大きく7つのフェーズに分かれます。中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」では、現状把握から承継方針の決定、磨き上げ、計画策定、引継ぎ実行、ポスト承継まで、一連の流れで整理されています(出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン第3版」2022年3月)。

準備期間は5〜10年が目安です。皆さまの会社では、どのフェーズまで進んでいるでしょうか。

7つのフェーズと42項目の対応

フェーズごとのおおよその所要期間と項目数は次のとおりです。長期戦になる理由が見えてきます。

  • 1

    現状把握(1〜3ヶ月/6項目):決算書3期分の整理、株主名簿の確認、知的資産の棚卸し、後継者候補の意向確認、事業承継診断、経営課題の洗い出し

  • 2

    承継方針の決定(3〜6ヶ月/5項目):親族内・社内・第三者(M&A)の方向選定、家族会議、株主・役員への共有、税理士相談、相談先の確定

  • 3

    経営の磨き上げ(1〜3年/7項目):収益力強化、属人業務の標準化、不要資産の整理、株価対策、債務整理、組織図の整備、業務マニュアル化

  • 4

    承継計画の策定(6ヶ月〜1年/6項目):事業承継計画書の作成、特例承継計画の提出(活用時)、株式移転スキームの設計、遺言・遺留分対策、保険の見直し、金融機関との調整

  • 5

    マッチング・契約(M&A時のみ/6項目):仲介・FA選定、ノンネームシート作成、候補先絞り込み、基本合意、デューデリジェンス対応、最終契約

  • 6

    引継ぎ実行(1〜2年/6項目):株式譲渡・贈与、代表交代、取引先・金融機関挨拶、従業員説明、許認可名義変更、税務申告

  • 7

    ポスト承継(3〜5年/6項目):後継者育成の継続、経営支援、株主構成の最終整理、納税猶予の継続要件管理、退任後の役割調整、新体制の定着確認

📌 ポイント
42項目すべてを同時に動かす必要はありません。今月着手する5項目を決め、3ヶ月・1年・3年の時間軸に分配する考え方が、止まらずに進めるコツです。

後継者不在の現実と背景

「自分の会社は大丈夫」と思いがちですが、データが示す現状は厳しいものです。お気づきでしょうか、後継者不在率が半数を切るのに、ここ数年でようやく到達したという事実を。

後継者不在率は依然52%超

帝国データバンクの2024年調査では、後継者不在率は52.1%(前年比1.4ポイント低下)でした(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」)。改善傾向ではあるものの、社長交代率は4.27%にとどまっており、世代交代のスピードは緩やかです。

⚠️ 注意
中小企業庁の試算では、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人、うち約半数(127万人)が後継者未定とされています(出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」2019年)。やることを後回しにすると、廃業選択を強いられる可能性が高まります。

準備に5〜10年かかる理由

事業承継ガイドラインが「5〜10年前から準備」を勧める理由は、株価対策と後継者育成の双方に時間が要るためです。株価対策は3〜5年、後継者育成は5〜10年が目安とされ、両方を同時並行で進めないと間に合いません(出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン第3版」)。

今月始める優先5項目

動き出すための最初の一歩は、ここから絞ります。すべてに着手しようとすると止まるため、今月は5項目に集中します。

5項目の中身

  • 1

    決算書3期分の整理:自社の財務状況を客観的に把握する出発点です。経常利益・自己資本・現預金の3つを最低限見直します。

  • 2

    株主名簿の確認:自社株が誰に分散しているかを再確認します。名義株(=実質的な所有者と異なる株主名義)の存在は早期発見が肝心です。

  • 3

    後継者候補の意向確認:親族・役員に「継ぐ意思があるか」を率直に確認します。意思のない後継者を前提に動くと、すべての計画が崩れます。

  • 4

    顧問税理士への相談予約:株価試算と税務リスクの初期診断を依頼します。1時間の面談で全体感がつかめます。

  • 5

    事業承継診断ツールの記入:中小企業庁の診断シートを使い、自社の準備度を見える化します。

✅ 実践ポイント
5項目に共通するのは「外部の協力なしで自分で動ける作業」という点です。最初の30日間を「自分だけで進める助走期間」と位置づけると、勢いがつきやすくなります。

3ヶ月以内に整える事項

初動を終えたら、専門家・支援機関と連携するフェーズに入ります。3ヶ月以内のやることは7項目です。

専門家連携で動かす7項目

項目 連携先 目的
株価試算(自社株の評価) 税理士 承継時の税負担の見立て
事業承継・引継ぎ支援センター訪問 中小企業庁所管センター 無料相談で全体方針を整理
家族会議の開催 配偶者・子・兄弟 遺留分・相続の事前合意
役員・主要株主への共有 社内役員 承継方針の社内合意
不要資産の洗い出し 経理・税理士 株価圧縮と財務スリム化
取引先・金融機関の関係整理 経営者 承継後も続く与信関係の確認
後継者教育プログラムの設計 経営者・後継者 5年スパンの育成計画

事業承継・引継ぎ支援センターは2023年度に2万9,978件の相談を受け付け、成約は2,023件にのぼっています(出典:中小企業庁「2024年版中小企業白書」)。無料・秘密厳守で利用できる公的窓口です。承継の標準的な流れはこちらもあわせてご確認ください。

📋 この章のまとめ
3ヶ月以内のやることは「専門家・公的窓口と接続する」ことが軸です。自社内だけで完結する作業から、外部の知見を取り込む段階へ移行します。

「やることが多すぎて止まる前に、譲渡先選びから一緒に考えませんか。」

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1年以内のやることは何か

1年以内に整えるのは、「計画書」と「数字」と「スキーム」の3点セットです。前段で集めた情報を、書面と数値計画に落とし込む段階です。

書面化が必要な10項目

1年以内のやることは大きく次の3カテゴリーに分かれます。それぞれに3〜4項目が紐づき、合計10項目になります。

  • 1

    事業承継計画書の作成(4項目):経営理念の言語化、5年〜10年の数値計画、後継者の役職遷移スケジュール、ステークホルダーへの説明資料

  • 2

    株式・財産整理(3項目):株式集約スキーム決定(贈与・譲渡・持株会社化)、遺言書作成、生命保険の受取人見直し

  • 3

    制度活用の準備(3項目):特例承継計画の提出(事業承継税制を使う場合)、認定経営革新等支援機関の確定、事業承継・引継ぎ補助金の申請検討

このうち特例承継計画は、2026年(令和8年)3月31日が提出期限です(出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」2024年改正後)。期限後は一般措置のみ適用となり、納税猶予の効果が大きく減ります。

60代経営者の優先順位

同じ「事業承継のやることリスト」でも、60代と70代では優先順位が変わります。残された準備時間が異なるためです。

60代と70代の動き方の差

帝国データバンクの2023年「全国社長分析」では、社長の平均年齢は60.5歳と過去最高を更新しました(出典:帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2023年)」)。70代に入ってから準備を始めると、5年の磨き上げ期間が確保できないケースが増えます。

具体的には、60代と70代では次のような優先順位の差が出ます。

年代 最優先のやること 後回しにできるもの
60代前半 後継者選定・育成、磨き上げ 株式移転の実行
60代後半 承継方針確定、株価対策 教育プログラム新設
70代前半 M&A・第三者承継検討、株式集約 磨き上げの長期計画
70代後半 譲渡先決定、引継ぎ実行 数年単位の磨き上げ

60代後半以降の方は、「磨き上げよりも譲渡先の見極め」に重心を移すのが現実的です。譲渡先候補としての実績・事例はこちらもご参考ください。

なぜ3年で止まる人が多い

事業承継のやることリストを作っても、3年目で止まる経営者が一定数います。なぜでしょうか。

止まる3つの理由

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、事業承継準備の停滞要因として「相談相手がいない」「後継者の意思が固まらない」「自社株評価が想定より高い」の3点が挙げられています(出典:中小企業庁「2024年版中小企業白書」)。

この3つは、別々の現象に見えて実はつながっています。相談相手がいないから後継者と本音で話せず、本音で話せないから意思が固まらず、意思が固まらないから株価対策にも踏み込めない、という連鎖が起きやすい構造です。

📌 ポイント
3年目の停滞は「やることがわからない」のではなく、「次の一歩を踏み出すための判断材料が足りない」ことが原因です。ここで第三者の視点を入れると、止まっていた歯車が回り始めるケースが少なくありません。

独自データから見える落とし穴

帝国データバンクの2024年データでは、後継者「決定済み」と回答した企業のうち、実際の承継完了までに5年以上を要しているケースが約4割と報告されています(出典:帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査」2024年)。「決まれば終わり」ではなく、「決まってからが本番」という構造が見えます。

相談先はどこを選ぶか

相談先選びを間違えると、やることリストの動きが止まります。「誰に何を聞くか」を整理しておきます。

4つの相談先の使い分け

相談先 得意分野 費用感
事業承継・引継ぎ支援センター 全体方針・初動相談 無料
税理士・公認会計士 株価試算・税務対策 数十万円〜
弁護士 遺留分・契約・株主紛争 数十万円〜
M&A仲介・FA 第三者承継のマッチング 成功報酬型(数百万円〜)

最初の窓口としては、無料の事業承継・引継ぎ支援センターが入りやすい選択肢です。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、初動相談の窓口として明記されています(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン第3版」2024年8月改訂)。

※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。

やることリスト総整理

本記事で見てきた42項目を、時系列で振り返ります。

📋 全体まとめ
今月(5項目):決算書整理、株主名簿確認、後継者意向確認、税理士相談、事業承継診断
3ヶ月以内(7項目):株価試算、支援センター訪問、家族会議、役員共有、資産整理、取引先確認、後継者教育設計
1年以内(10項目):計画書作成、株式・財産整理、制度活用準備
3年以内(20項目):磨き上げ、計画策定、マッチング・契約、引継ぎ実行

事業承継のやることが多く見えるのは、本来5〜10年かけて進める作業を一度に視界に入れているからです。月単位・年単位で分配すると、それぞれのフェーズでやることは決して多くありません。

「全部はできない」と感じたときこそ、優先順位を整理する好機です。今月の5項目から始めて、半年後に「自社の方向性」が見えてきたら、譲渡先選びという選択肢も含めて、改めてご検討ください。

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監修:株式会社SDアドバイザーズ 事業承継グループ
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