アトツギ甲子園とは 39歳以下の後継者と事業承継
「息子や幹部に、そろそろ会社の将来を考えてほしい。でも、承継の話は切り出しにくい」。そんな経営者の対話の入口として広がるのが、中小企業庁主催の「アトツギ甲子園」です。39歳以下の後継予定者が、家業の資源を活かした新事業を競うピッチコンテスト(発表・審査の競技会)です。
第7回のエントリー受付は2026年8月3日に始まりました(出典:経済産業省)。本記事は要件・日程・意義を整理します。大会は後継者を育て、承継対話を始める糸口にもなります。
本記事は「アトツギ甲子園」という公的ピッチプログラムの制度概要・応募要件・意義に特化しています。事業を譲り受ける側である私たち株式会社SDアドバイザーズが、第三者の立場から整理しました。後継者を育てるのに何年かかるかという時間軸・準備計画は、あわせて後継者育成は何年かかる?引退から逆算する事業承継 をご覧ください。
目次
アトツギ甲子園の全体像

名前は聞いたことがあっても、中身までご存じの経営者は多くありません。ひとことで言えば、後継ぎだけが出場できるビジネスコンテストです。誰が対象で、どこが主催し、どんなアイデアが評価されるのか。この3点を押さえると、大会の輪郭が見えてきます。
中小企業庁が主催する大会
アトツギ甲子園は、中小企業庁が主催し、39歳以下の中小企業・小規模事業者の後継予定者が、家業の経営資源を活かした新規事業アイデアを競うピッチイベントです。2026年度は、その第7回の開催にあたります(出典:経済産業省「第7回『アトツギ甲子園』エントリー受付開始」 https://www.meti.go.jp/press/2026/07/20260715003.html)。理念は「承継+創造」。受け継ぐものと、後継ぎ自身が生み出すものを両輪でとらえます。
一般のコンテストとの違い
アトツギ甲子園が独特なのは、応募が後継ぎに限られ、しかも家業の技術・設備・顧客基盤・土地といった経営資源を活かしたアイデアであることを審査で重く見る点です。ゼロから起業する若者ではなく、既存の会社を土台に第二創業を構想する——ここが分かれ目になります。皆さまの会社にも、後継ぎだからこそ活かせる資産が眠っていないでしょうか。
アトツギ甲子園は、中小企業庁主催の後継ぎ限定ピッチイベントです。単なる新規事業のアイデア勝負ではなく、「家業の経営資源をどう活かすか」を評価軸に据えている点が、一般のビジネスコンテストとの決定的な違いです。
なぜ39歳以下なのか
この大会を知った経営者が最初に引っかかるのが、年齢の区切りです。「なぜ39歳で線を引くのか」。まずは応募資格に書かれた数字から確認しましょう。
39歳という区切りの意味
第7回の応募資格は、39歳以下(1987年4月以降生まれ)で代表権を持たない後継予定者です(出典:経済産業省)。なぜこの年齢帯か。中小企業の経営者は60代・70代が中心で、その子世代や後継候補はちょうど30代前後にあたります。代表を継ぐ前の、頭も体も柔らかい時期に経営者の視点を養ってほしい——年齢の条件からは、そんな主催者の意図が読み取れます。早いうちに「自分ごと」として家業に向き合ってもらう、それが狙いなのでしょう。
対象外でも道はある
では、40歳を超えていたり、すでに代表権を持っていたりする後継者は無縁でしょうか。そうとは限りません。大会本体に出られなくても、運営する学習プログラム「ACT(Atotsugi Challenge Training)」は大会参加者以外も受講できます。年齢や立場で後継者を選別する趣旨ではなく、あくまで「競技」の参加枠に条件があるだけです。ここを取り違えると「うちの後継ぎはもう遅い」と早合点しかねません。
・応募資格は39歳以下(1987年4月以降生まれ)・代表権なしの後継予定者(第7回時点)
・年齢設計は「代表就任前に経営者視点を養う」狙いを反映
・対象外でも学習プログラムACTは受講でき、後継者を年齢で切り捨てる制度ではない
応募資格と対象者像

ここからは、誰が出られるのかを細かく見ます。「うちの後継ぎは当てはまるのか」の材料にしてください。資格要件は回ごとに微調整されるため、以下は第7回・執筆時点(2026年8月)の内容です。
代表権を持たない後継予定者
核になるのは「代表権を持たない後継予定者」という立場です。取締役や役員でも、代表取締役などの代表権がなければ応募できます。家業とは別の法人で代表を務める場合も、家業を今後承継する予定、または家業の経営資源を活用していることを条件に応募が認められています。「役員でないと出られない」「別会社の社長だと無理」は、いずれも誤解です。出られるかどうかに関わる最大の条件が、家業で代表権を持っているかどうかです。
親族外承継も対象に入る
見落とされがちですが、アトツギ甲子園は血縁のある後継ぎだけの大会ではありません。家業の幹部社員や、外部から招かれた後継候補といった親族外の後継予定者も対象に含まれます。血のつながりよりも「この会社を継ぐ意思があるか」を軸に据えています。ただし細かな条件は毎回の公式要項で定められます。幹部を後継者候補と考える経営者は、募集要項の原文で該当可否を必ず確かめてください。
応募資格は毎回見直され、年齢基準日や細かな条件が変わる場合があります。本記事は第7回時点のものです。応募を検討する際は、公式サイト(atotsugi-koshien.go.jp)と経済産業省の最新発表で、必ず最新の要項をご確認ください。
第7回の日程と流れ

では、実際のスケジュールを見てみましょう。エントリーから決勝までは半年ほど続く長丁場で、後継ぎにとっては家業をじっくり見つめ直す時間にもなります。
エントリーから決勝まで
第7回の主な日程は次のとおりです。地方大会を勝ち抜いた後継ぎが、東京の決勝に立ちます。日付は、いずれも執筆時点で公表されている予定です。
| 項目 | 日程(第7回・予定) |
|---|---|
| エントリー受付開始 | 2026年8月3日(月) |
| エントリー締切 | 2026年11月25日(水)18:00 |
| 応募書類提出締切 | 2026年11月27日(金)12:00 |
| 地方大会 | 2027年1月19日(火)〜2月8日(月) |
| 決勝大会 | 2027年2月26日(金) |
ピッチは4分間のプレゼンと、審査委員との6分間の質疑応答という形式です。締切日そのものより、そこへ向けて後継ぎが家業の課題を言葉にする過程に意味があります。日程は予定であり、変更の可能性もあるため、応募時は公式の最新情報をご確認ください。
大会を支える関連プログラム
アトツギ甲子園は、単発のコンテストにとどまりません。エントリー期間には全国の後継ぎと支援機関が集う「アトツギSUMMER CAMP」(第7回は2026年8月31日〜9月1日、東京で開催予定)があり、決勝直前には関連イベント週間「アトツギWeek」も企画されます。学習面では前述のACTが、新規事業の起こし方や組織経営を学ぶ場を提供します。大会に出るか決める前に、こうした場をのぞくのも一つの入り方です。
私たち株式会社SDアドバイザーズは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではなく、自社グループに迎え入れる譲受側として活動しています。将来的な譲渡・グループインをご検討中の経営者の方からのご相談をお待ちしています。
審査基準を読み解く

後継ぎのアイデアは、どんなものさしで評価されるのか。基準を知ると、この大会が後継者に何を求めているかが浮かび上がります。
5つの評価軸
審査基準は、①新規性、②持続可能性、③社会性、④承継予定の会社の経営資源活用、⑤熱量・ストーリーの5項目です(出典:経済産業省)。目を引くのは④で、これがある限り「家業と切り離した思いつき」は評価されにくい仕組みです。過去の受賞例を見ても、製造業や伝統産業の後継ぎが、先代から受け継いだ設備や技術を土台に社会課題の解決を描いた例が目立ちます。自社の強みを言語化する訓練として、この5項目は後継者のよい鏡になります。
エントリー数が語る潮流
意外に知られていませんが、この大会の広がりは応募者数に表れています。経済産業省の発表によれば、エントリー数は第5回の189名から第6回の225名へと増えました(出典:経済産業省 第5回・第6回受賞者決定プレスリリース)。競合記事の多くは「後継者不足」の入口統計は扱っても、大会の参加規模の変化までは追っていません。少なくとも第5回から第6回にかけて、応募は36名増えました。後継ぎ自身が手を挙げる動きが、着実に広がっています。承継を、親から「言い渡されるもの」ではなく、後継ぎが自ら「挑むもの」へ。この応募数の伸びは、その兆しとして読めます。
・審査は新規性・持続可能性・社会性・経営資源活用・熱量の5軸
・「家業の経営資源を活かす」軸が、一般の起業コンテストと一線を画す
・エントリーは第5回189名→第6回225名と増加傾向にある(経済産業省発表)
対話はどう始めるか

ここが、後継者候補を持つ経営者にとって本題かもしれません。「大会があるのはわかった。では、うちはどう使えばいいのか」。答えは、応募を急がせることではありません。
大会を対話の糸口にする
応募を勧める前に、まず一度、家業の話をする口実にしてみてください。「こういう大会があるらしい」と後継ぎに伝え、家業の経営資源を棚卸ししてみる。それだけで対話は動き出します。5つの審査軸は、そのまま親子や幹部で話し合う議題になります。「うちの技術で、ほかに何ができるか」「先代から受け継いだ何を残すか」。この問いの共有が、承継準備の第一歩です。背景には後継者難の現実があります。帝国データバンクの調査では、2024年の後継者不在率は約5割とされ、多くの会社が承継の相手を決めきれていません(出典:帝国データバンク調べ、2024年)。
今日から始められる一手を、この順で試してください。
①「アトツギ甲子園という後継ぎ向けの大会がある」と後継者候補に共有する
② 自社の技術・設備・顧客基盤・土地など「経営資源」を一枚の紙に書き出す
③ その資源で「あと何ができそうか」を、親子または幹部で一度話してみる
応募の是非は、その対話のあとで決めれば十分です。
相談窓口を知っておく
対話が動くと、やがて「具体的な承継の進め方も知りたい」段階に入ります。アトツギ甲子園は育成と気づきの場であり、実際の承継手続きは別の窓口が担います。国が各都道府県に設けた事業承継・引継ぎ支援センターをはじめ、相談先は複数あります。大会を入口に関心が芽生えたら、早めに公的な窓口へ足を運ぶと、選択肢を広く比べられます。どこに相談すべきか迷う段階こそ、整理が効きます。
M&Aとの接点を探る
アトツギ甲子園の話題からM&Aへ移ると、少し唐突に感じる方もいるはずです。けれど後継ぎの育成と、M&A(第三者への承継)は、対立する道ではありません。むしろ地続きにつながっています。
承継とM&Aは対立しない
アトツギ甲子園は親族内承継を思わせる大会ですが、後継ぎが家業と本気で向き合うほど、「自分だけでは伸ばしきれない事業がある」という現実にも突き当たります。そのとき、事業を、より活かせる相手に託す選択肢が視野に入ります。切り捨てるのではなく、その事業がもっと伸びる場所へ送り出す。事業再編や採算改善につながる、前向きな一手です。後継ぎがこうした判断を下せることは、承継の失敗ではなく成熟の証です。後継者難を背景とした倒産は、東京商工リサーチの調査で2026年上半期に264件と過去最多を記録しました(出典:東京商工リサーチ調べ、2026年7月)。継ぐ意思と、託す判断の両立が、会社と雇用を守る現実的な道になります。
譲り受ける側から見た後継ぎ
私たち株式会社SDアドバイザーズは、事業を譲り受けてグループに迎える側です。「40人の社員がいる会社を40社つくる」という4040 VISION(当社が掲げるビジョン)のもと、長く持ち続ける前提で会社をお迎えしています。後継ぎが自ら家業の未来を描く姿は、譲り受ける側から見ても頼もしいものです。仮に将来グループ入りを選ばれる場合でも、後継者が経営者としての視点を養っておくことは、承継後の歩みを確かにします。大会での挑戦と、外部承継という選択肢は背反しません。
後継者と歩む次の一歩
最後に振り返ります。アトツギ甲子園は、後継ぎが家業の経営資源を活かした挑戦を競う、中小企業庁主催のピッチイベントでした。大会の勝敗が承継の成否を決めるわけではありません。けれど、後継者が自社と本気で向き合うきっかけとしては、これ以上ないほど整った舞台です。
今日からできること
後継者候補を持つ経営者にとって、この大会の価値は「応募」より「対話の入口」にあります。まず大会の存在を伝え、家業の強みを一緒に書き出す。その先に育成があり、承継があり、必要なら外部への承継という選択肢もあります。承継の話を先送りにしてきた方こそ、軽い雑談から始めてみてください。一枚の紙に会社の強みを書き出すだけでも、次に進む景色が変わります。会社の未来を誰とどう描くのか。まずはその話題を、後継者と一度、口に出してみてください。継ぐ気持ちがあるのか、それともまだ迷っているのか。まずはそこが見えてきます。
・アトツギ甲子園は中小企業庁主催、39歳以下の後継予定者向けピッチイベント
・審査は「家業の経営資源の活用」を重視し、承継+創造を理念とする
・応募の是非より、親子・幹部で家業の強みを話し合う「対話の糸口」として活かせる
私たちは仲介者ではなく、お迎えする側です。経営者様のお考えと、私たちのグループとの相性を、一緒にじっくり見極める時間を大切にしています。
私たち株式会社SDアドバイザーズは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。
「どのような会社にバトンを渡すべきか」を検討されている段階でも、一度お話を聞かせてください。譲渡を急かすことはいたしません。
・経済産業省「第7回『アトツギ甲子園』エントリー受付開始」 https://www.meti.go.jp/press/2026/07/20260715003.html
・経済産業省 第6回「アトツギ甲子園」受賞者決定プレスリリース https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260227001/20260227001.html
・経済産業省 第5回「アトツギ甲子園」受賞者決定プレスリリース https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250220004/20250220004.html
・中小企業庁「アトツギ甲子園・後継者育成」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/atotsugi-koshien.html
・アトツギ甲子園 公式特設サイト https://atotsugi-koshien.go.jp/
・帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」
・東京商工リサーチ「後継者難倒産(2026年上半期)」
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。
「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。
※ アトツギ甲子園の応募資格・日程は回ごとに変更される場合があります。本記事は第7回・執筆時点(2026年8月)の情報です。税務・法務や個別の事業承継案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家、および各種公的窓口にご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。