中小企業の事業承継にM&Aが選ばれる3つの理由と支援制度
「うちのような小さな会社を誰が買うのか……」。そう感じている経営者の方は、決して少なくありません。大企業のM&Aニュースばかりが目に入り、中小企業には無縁の話だと思ってしまう気持ちは、自然なことです。
しかし実際のM&A市場では、後継者がいない中小企業の第三者承継が年々増加しており、小規模な企業こそ買い手から高い評価を受けるケースが多くあります。問題は会社の規模ではなく、会社の「強み」が伝わっているかどうかです。
この記事では、中小企業がM&Aを選ぶ3つの理由をはじめ、活用できる支援制度や承継前の準備方法まで、わかりやすく解説します。「話だけでも聞いてみたい」と思っている方にも、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
目次
中小企業の事業承継、いま何が起きているのか
後継者不在は「他人事」ではない現実
帝国データバンクが毎年実施している「全国企業後継者不在率動向調査」によると、2023年時点で後継者が不在の企業の割合は約59.3%にのぼります。(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2023年)」)
特に中小企業・小規模事業者では、経営者の高齢化が深刻な課題となっています。中小企業庁の推計によれば、2025年には経営者が70歳以上の中小企業・小規模事業者が約245万社に達し、このうち約半数に後継者がいないとされています。(出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者における事業承継の現状」)
後継者が見つからないまま時間が過ぎると、最終的には廃業という選択を迫られることになります。廃業は従業員の職を奪い、取引先にも大きな影響を与え、長年積み上げてきた技術やノウハウが失われてしまいます。
・後継者が不在の企業は全国で約59.3%(2023年・帝国データバンク調べ)
・2025年には70歳以上の経営者の企業が約245万社に達すると推計
・後継者不在のまま放置すると廃業リスクが高まる
M&Aによる事業承継が選ばれる時代へ
かつて事業承継といえば「子どもや親族に引き継ぐもの」というイメージが主流でした。しかし少子化の影響や、後継者となるべき子どもが別の道を歩むケースが増えたことで、親族内承継(=家族・親族へ引き継ぐ方法)だけでは解決できない状況が広がっています。
そこで近年急増しているのが、M&Aによる第三者への事業承継です。中小企業庁が発行する「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、後継者不在の中小企業にとってM&Aが有効な解決策であることを明確に位置づけています。
事業承継には主に3つの方法があります。それぞれの特徴を整理すると、以下のようになります。
| 承継方法 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子ども・配偶者・親族へ引き継ぐ | 引き継ぐ意欲のある親族がいる |
| 従業員承継 | 社内の役員・幹部社員へ引き継ぐ | 社内に信頼できる後継者候補がいる |
| M&A(第三者承継) | 社外の企業・個人に事業を譲渡する | 後継者が社内外に見つからない |
「うちの会社を誰が買うのか」という不安の正体
規模は問題ではない──買い手が求めるものとは
「うちのような零細企業を買いたい会社がいるのだろうか」と思うのは自然な感情です。しかし実際のM&A市場を見ると、買い手が中小・小規模企業に求めているものは「売上規模の大きさ」ではありません。
買い手が重視するのは、既存の顧客基盤、熟練した職人や技術者、特定分野での実績と信頼、許認可・資格、地域での知名度といった、すぐには真似できない要素です。これらは規模に関係なく、長年経営を続けてきた中小企業こそが保有している強みです。
M&Aの評価基準は「売上規模」だけではありません。地域密着型のビジネス基盤、特定分野での技術・資格・許認可は、大企業が自社で0から築くより「買う」方が合理的であるため、高く評価される傾向があります。
地域密着・ニッチ業種の強みが評価される理由
特に地方の老舗企業や、特定業種に特化したニッチ(=専門性の高い狭い分野)の企業は、買い手から意外なほど高い評価を受けることがあります。
たとえば、30年間地域の同じ顧客と取引を続けてきた工務店や、特定の食品製造技術を持つ小さな加工会社などは、その技術や顧客基盤を短期間で再現することは困難です。だからこそ、それを買うことに大きな意味が生まれるのです。
実際の承継事例については、SDアドバイザーズの実績・事例紹介ページでご確認いただけます。
・買い手は「売上規模」よりも「再現できない強み」に価値を見出す
・顧客基盤・技術・許認可・地域での知名度は中小企業の大きな武器
・ニッチ分野・地域密着型の企業は想定以上の評価を受けることがある
中小企業がM&Aを選ぶ3つの理由

理由①:後継者問題を根本から解決できる
「子どもには自分の人生を歩んでほしい」「社内に引き継げる人材がいない」。そんな状況でも、M&Aならば会社を存続させる道が開けます。
M&Aによる第三者承継では、親族や社員以外の企業・個人が後継者となります。後継者が自社に存在しない場合でも、会社の事業・従業員・ブランドをそのまま引き継いでもらえる点が最大のメリットです。
事業承継の全体的な流れについては、SDアドバイザーズの事業承継の流れをご参照ください。
理由②:従業員の雇用を守り続けられる
多くの経営者が廃業を最後まで避けたいと思う最大の理由は、従業員への責任感です。長年一緒に働いてきた社員の雇用を、自分の一存で奪うことはできない──その気持ちは、経営者として当然の感情です。
M&Aによる事業承継では、原則として従業員の雇用が引き継がれます。雇用継続は交渉で条件化することが一般的であり、廃業と違い、従業員が職を失うリスクを大幅に下げることができます。
M&A交渉の際は、「従業員の雇用継続」を条件として明示的に織り込むことが重要です。中小M&Aガイドライン(第3版・中小企業庁)でも、売り手の希望条件を事前に整理しておくことが推奨されています。
理由③:経営者が正当な対価を受け取れる
廃業の場合、経営者は会社の資産を解散・処分するだけで、手元に残るものは少なくなりがちです。一方、M&Aによる株式譲渡(=株式を買い手に売却する方法)では、自社の企業価値に見合った譲渡対価(=売却金額)を受け取ることができます。
長年の経営努力が価値として評価され、経営者自身の老後の生活資金や次のチャレンジの原資にもなりえます。「苦労してきた分を形にしてもらえる」という点は、M&Aの大きな魅力のひとつです。
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
中小企業だからこそ使える3つの支援制度
事業承継を検討している中小企業には、国が用意している支援制度が複数あります。適切に活用することで、費用面・税負担の軽減につながる可能性があります。
① 事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)
事業承継税制とは、中小企業の株式を後継者に贈与・相続する際に、一定の要件を満たすことで贈与税や相続税の納税を猶予(=一定期間支払いを待ってもらう)する制度です。
通常、株式の贈与・相続には高額な税負担が発生しますが、この制度を活用することで後継者への引き継ぎコストを大幅に抑えることができます。都道府県の認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士等)を通じて申請します。
事業承継税制には適用要件(雇用維持義務など)があり、要件を満たさなかった場合に猶予が取り消されることもあります。必ず税理士・弁護士などの専門家に個別の状況をご相談ください。
② 事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が実施する補助金制度です。M&Aを含む事業承継後の設備投資・販路拡大・経営資源の統合にかかる費用の一部が補助されます。
補助額や申請要件は毎年見直されるため、最新の公募情報は中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センターの公式サイトでご確認ください。
③ 事業承継・引継ぎ支援センター
全国47都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター(=国が設置した無料の相談窓口)」では、M&Aによる事業承継の相談を無料で受け付けています。
民間のM&A仲介会社に依頼する前に、まずここで情報収集・整理をしてみることも選択肢のひとつです。
事業承継税制・補助金ともに、申請のタイミングや要件が重要です。「まだ先の話」と思っているうちに申請期間が過ぎてしまうケースも少なくありません。早めに専門家へ相談し、活用できる制度を把握しておきましょう。▶ SDアドバイザーズの実績・事例紹介はこちら
承継前に整えるべき「属人的経営」の問題
「社長がいないと回らない」状態が承継の壁になる
中小企業のM&Aを進めるうえで、意外なほど多くの会社が直面する壁があります。それが「属人的経営(=社長や特定の人物の判断・行動に業務が依存している状態)」です。
「顧客との関係が社長のみに紐づいている」「社長しかわからない取引先のルールがある」といった状態では、社長が抜けた後に会社が機能しなくなるリスクがあり、買い手から敬遠される原因にもなります。
「社長しか対応できない顧客がいる」「業務の手順が社長の頭の中にしかない」という状態は、M&Aの評価額を下げる要因になります。承継を考え始めたら、早めに「脱・属人化」を進めることが重要です。
脱・属人化を進める3つのステップ
属人的経営の改善は一朝一夕にはできませんが、以下の3ステップで段階的に進めることができます。
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1
業務の棚卸し:どの業務が誰(特に社長)に依存しているかをリストアップし、見える化する
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2
マニュアル化・文書化:属人化している業務を手順書として文書に落とし込む。まず「ある程度の人が読めば動ける」レベルから始めてかまわない
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3
権限委譲の試行:マニュアルをもとに、一部の業務を幹部社員に委ねてみる。「社長不在でも1週間回る状態」を目指すことが理想
・属人的経営はM&Aの評価額を下げる主要因のひとつ
・業務の棚卸し→マニュアル化→権限委譲の順で段階的に改善できる
・承継の意思が固まる前から、少しずつ始めておくことが理想
M&Aによる事業承継の流れ
準備から相手探し・基本合意まで
M&Aによる事業承継は、おおむね以下のステップで進みます。準備から成約まで、一般的には数カ月〜1年程度かかる場合が多いと言われています。
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1
事前準備:財務情報・会社概要の整理、希望条件(価格・雇用継続・引継ぎ期間など)の明確化
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2
相手先の探索:M&A仲介会社・支援センターなどを通じて買い手候補を探す。この段階では会社名を伏せた「ノンネームシート(=会社を特定されない範囲で概要を示す資料)」を使うのが一般的
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3
トップ面談・交渉:買い手候補と経営者が直接話し合い、条件を擦り合わせる。双方の合意が得られれば基本合意書を締結
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4
デューデリジェンス(DD):デューデリジェンス(=買い手が売り手の企業内容を詳しく調査すること)として、財務・法務・労務などの調査が実施される
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5
最終契約・成約:条件が合意されれば最終契約書を締結し、M&Aが成立。その後、一定期間の引継ぎ支援をおこなうことが多い
詳細な手続きの流れは、SDアドバイザーズの事業承継の流れページでも詳しく解説しています。
まず何から始めればよいか
「考える」より「相談する」が近道
事業承継・M&Aは、「まだ早い」「もう少し業績が良くなってから」と先送りにしてしまいがちなテーマです。しかし、準備に時間をかけるほど選択肢が広がり、良い条件での成約に近づくことが多いのも事実です。
まず一歩目として大切なのは、「相談する」ことです。M&Aや事業承継について詳しくなくても、「会社をこうしたい」「こういう条件だったら検討できる」という思いを専門家に話すだけで、見えてくるものがあります。
SDアドバイザーズが選ばれる理由
株式会社SDアドバイザーズは、外部企業のM&Aをサポートするコンサルタント会社ではありません。私たち自身が事業承継・M&Aを通じてグループ企業を拡大していく「譲渡先(買い手)」として活動しています。
「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に経営者の方と向き合い、会社の未来を一緒に考えてきた実績があります。「売った後どうなるか」を自分ごととして考えられる点が、SDアドバイザーズの強みです。
※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。
一人で抱え込まず、まず話だけ聞いてもらうだけでも、見えてくるものがあります。
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。▶ 実績・事例紹介はこちら
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