事業承継を銀行に相談してよいか 金融庁の指針

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取引銀行に事業承継の話を切り出すと、店を畳むつもりだと受け取られないか。そう考えて言い出せない経営者の方は少なくありません。金融庁の監督指針は、経営者保証の相談に適切に対応できる態勢が整っているかを、銀行を見る着眼点に挙げています。相談そのものは、想定された行為です。

ただし対応の中身は各行の経営判断に委ねられ、期待できないこともあります。この記事では、銀行に期待してよい線と、そうでない線を引きます。

この記事で扱うのは、取引銀行に相談してよいのかという判断そのものです。
企業価値担保権のしくみを知りたい → 企業価値担保権とは 事業承継で使えるのか
銀行以外も含めて相談先を比べたい → 事業承継の相談はどこへ?窓口7選と選び方

相談は特別か普通か

自分だけが弱音を吐いているのではないか。相談をためらう理由の多くは、ここに行き着きます。まず数字で相場観を確かめておきましょう。

年2.4万者が公的窓口へ

令和7年度に全国の事業承継・引継ぎ支援センターへ新たに相談した経営者は、24,000者を超えました。センターの開設以来、初めての水準です。相談回数は92,509回にのぼります(出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」2026年5月29日)。

累計の新規相談者数は174,685者。第三者承継とは、親族や社内に後継者がいない場合に、社外の相手へ引き継ぐことです。これに絞った新規相談者も16,322者でした。成約は2,265件と過去最多です(出典:同上)。

公的窓口の数字だけでこの規模です。銀行や税理士に相談した分は、ここに入っていません。

背景には後継者の不在があります。帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」では、後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント低下し、7年連続の改善ですが、なお2社に1社です。皆さまの会社では、いかがでしょうか。

銀行が持ち場になる理由

相談先として銀行が挙がるのには、理由があります。メインバンク(=一般に、借入残高が大きいなど、会社にとって主たる相談相手となっている金融機関)は、毎期の決算書を何年も見続けてきた相手です。

金融庁の監督指針も、この関係に触れています。貸付残高が多いなど、顧客企業から主たる相談相手としての役割を期待されている先を、指針は「主たる取引金融機関」と呼びます。その銀行には、コンサルティング機能をより一層積極的に発揮し、経営改善や事業再生に向けた自助努力を最大限支援することが期待される。Ⅱ-5-2-1 にそう書かれています。

そしてもう一つ。多くの中小企業では、経営者保証(=会社の借入れを経営者個人が連帯保証すること)の当事者が銀行と経営者本人です。銀行借入れに経営者保証が付いている会社では、事業承継にあたって保証の扱いを決める場面が来ます。そのとき向き合う相手が、この銀行です。

📋 この章のまとめ
・公的窓口だけで令和7年度の新規相談者は24,000者超、相談回数は92,509回
・後継者不在率は50.1%で、なお2社に1社(帝国データバンク・2025年調査)
・保証契約の当事者である以上、銀行はいずれ話に入ってくる相手

金融庁が銀行に求めること

では、銀行の側は何を求められているのでしょうか。相談を受ける態勢を、行政の文書がどう書いているか確かめます。

監督指針の相談対応の項

金融庁は「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(=金融庁が金融機関を監督するときの着眼点をまとめた行政の文書。法律ではありません)を公表しています。その Ⅱ-10-2(3) は、銀行を見る着眼点をこう置いています。「主債務者、保証人からの経営者保証に関する相談に対して、適切に対応できる態勢が整備されているか」。

相談を受け付ける態勢があるかどうかを、当局が見ている。これが、冒頭の問いへの直接の答えです。

同じ Ⅱ-10-2(1) は、既存の保証契約への対応を銀行の取組事項に挙げ、その注でこう補っています。「M&A・事業承継など主たる株主等が変更になることを金融機関が把握した保証契約を含む」。承継の場面は、例外ではなく明記された対象です。

さらに Ⅱ-10-2(6) は、説明の中身にも踏み込みます。なぜ保証が必要なのか、どう改善すれば変更・解除の可能性が高まるのか。それを顧客の理解と納得を得る目的で説明し、結果等を「書面又は電子的方法で記録する態勢」が整っているかを問うています。口頭で流されて終わり、という前提には立っていません。

2026事務年度の方針

もう一つが金融行政方針(=金融庁がその事務年度に取り組む方針をまとめた文書)です。2026年9月15日に公表された2026事務年度の方針は、「(2)地域金融力の強化」の項でこう述べています。地域企業のM&A・事業承継などのニーズに対応するため、というのが前置きです。続けて「地域金融機関による投資銀行サービスを含む支援能力の向上やメインバンク機能発揮を後押しする」。

投資銀行サービスとは、M&Aの助言や資金調達の組み立てなど、融資以外の金融サービスを指します。メインバンク機能の発揮とは、日常的な取引を通じて会社の状況を把握し、資金供給にとどまらない支援まで踏み込むことです。方針が求めているのは、この二つを担える力を銀行が高めることです。

ここで語尾に目を留めてください。動詞は「後押しする」です。義務づけでも命令でもありません。方針は行政の取組方針であって、法令ではないからです。

📌 ポイント
監督指針も金融行政方針も、法律ではありません。前者は監督上の着眼点、後者は行政の取組方針です。「金融庁が銀行に事業承継支援を義務づけた」という理解で臨むと、期待と現実がずれます。銀行が応じる根拠ではなく、銀行に何を尋ねてよいかの手がかりとして読むのが実際的です。
📋 この章のまとめ
・監督指針は、経営者保証の相談に適切に対応できる態勢の整備を着眼点に挙げている
・M&A・事業承継で主たる株主等が変わる保証契約は、明記された対象
・2026事務年度金融行政方針の動詞は「後押しする」。義務づけではない

メインバンクの守備範囲

銀行が本来の持ち場として扱える話と、そうでない話があります。守備範囲を先に知っておくと、聞き方が変わります。

保証の話は本来の持ち場

経営者保証には「経営者保証に関するガイドライン」があります。監督指針 Ⅱ-10-1 によれば、平成25年12月5日に同名の研究会が公表したものです。

ここが肝心です。監督指針は、このガイドラインを「自主的自律的な準則」と位置づけています。そして主債務者・保証人・対象債権者によって「自発的に尊重され、遵守されることが期待されている」と書いています。法律ではなく、守ることが期待されている約束事だ、ということです。

したがって「要件を満たせば保証は必ず外れる」とは書かれていません。最終的な判断は金融機関に委ねられています。それでも、保証は銀行が正面から答えるべき領域です。

参考
保証を外す側の条件と実際の手順は事業承継で経営者保証を外す3つの条件と手順で解説しています。

担保の選択肢は広がった

融資の組み立て方も動いています。2026年5月、企業価値担保権制度(=事業全体を担保にできる制度)が導入されました。2026事務年度金融行政方針は、この制度をめぐる金融機関の取組を後押しするとしています。あわせて「経営者保証に依存しない融資の促進」に向け、着実に取組を進めるとも書かれています。

個人保証に頼らない形が、制度として増えつつある。承継を見据えるなら、この動きは押さえておく価値があります。自行が企業価値担保権の取り扱いを始めているかどうかも、保証の見直しを尋ねるときに併せて確認できます。

M&A支援に踏み込む銀行も

銀行自身がM&A支援に踏み込む場合もあります。監督指針 Ⅱ-5-2-1 の注2 が挙げるのは、マッチング支援、M&A仲介業務、フィナンシャル・アドバイザー業務、PMI支援などです。フィナンシャル・アドバイザー業務は一方の当事者につく助言者の役割、PMI支援は成立後の統合作業の支援です。これらを行う場合には、所要の体制整備と適切な説明・広報が求められます。そこには「M&A支援機関登録制度」の活用も含まれます。

つまり、銀行のM&A支援は「やるなら体制を整えてやること」という扱いです。どこまで手がけているかは、銀行ごとに違います。

ひとつ補足を。M&A支援機関登録制度の公募要領は、登録された事業者の中小M&A支援に係る品質を保証するものではない、と明記しています(出典:中小企業庁「M&A支援機関登録制度 公募要領」(令和8年度))。登録の有無は、体制を確かめる手がかりの一つ。そう受け止めておくのが実際的です。

✅ 実践ポイント
最初の面談では、次の3つを尋ねると守備範囲がつかめます。
① 保証の見直しで、いま何を提示してもらえるか
② M&A支援は自行で手がけるのか、他機関へつなぐのか
③ M&A支援機関登録制度に登録しているか、その支援の対価はどうなるか
③は特に大切です。銀行の支援は無料のものも有料のものもあり、行によって扱いが分かれます。

融資姿勢は変わるのか

ここが、多くの経営者が最も気にする点でしょう。正面から答えます。

相談は条件に響くか

相談したこと自体を理由に融資条件を不利にすることを禁じた規定は、監督指針にも2026事務年度金融行政方針にも見当たりません。同時に「相談しても融資には影響しない」と保証した規定も、どちらにもありません。

つまり、制度の側に約束はない。だからこそ、こちらから位置づけを決めて臨むのが現実的です。

とはいえ、公的窓口だけで年に24,000者を超える経営者が相談しています。相談したこと自体が問題になったという注意喚起は、ここまで見てきた金融庁の公表資料に見当たりません。制度に約束がないことと、相談が危険であることは、別の話です。

具体的には、面談の冒頭で「今日は情報収集の段階で、具体的な予定があるわけではない」と伝える。そのうえで、保証の見直しの説明を受けたら、監督指針 Ⅱ-10-2(6) が求める記録の話につなげ、書面での整理を依頼する。相談が口頭の印象だけで終わる状態を避けられます。

ここは一点、誤解のないように。指針が求めているのは銀行側の記録態勢であって、顧客への書面交付ではありません。記録の方法も「書面又は電子的方法」と併記されています。依頼はできますが、応じる義務まではない。そのうえでお願いする、という位置づけです。

格付けを動かすのは何か

格付け、いわゆる行内の信用格付はどうでしょうか。「債務者区分」の根拠だった金融検査マニュアルは、令和元年12月に廃止されました(出典:金融庁「検査マニュアル廃止後の引当に関する取組み」)。ただし金融庁は、廃止と同時に公表した文書で「現在の債務者区分を出発点に」引当を見積もる道筋を示しています(出典:金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」令和元年12月)。

区分の考え方そのものは、実務に残っているわけです。監督指針でも、引当・償却の情報開示の項目としてこの語が使われています。ただし具体的な評価方法や運用は、各金融機関によって異なります。一方、相談の有無を格付けの判断に結び付けた記載は、監督指針には見当たりません。

ただし、これは「影響しない」という保証ではありません。銀行の与信判断は決算内容や業況をもとに行われるもので、その運用は各行に委ねられています。懸念が消えないのであれば、初回は保証の見直しという入口から尋ねる手もあります。承継の相談ではなく、保証の相談として始める形です。

⚠️ 注意
「相談しても融資に影響しません」と言い切る解説を見かけたら、その根拠を確かめてください。禁止規定は確認できないというのが、公表資料から言える範囲です。逆に「相談すると必ず不利になる」という根拠もありません。どちらの断定にも、公表資料の裏づけはありません。
銀行に切り出す前に、譲り受ける側の話も聞いてみませんか。

株式会社SDアドバイザーズは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではなく、自社グループに迎え入れる譲渡先として活動しています。譲渡をご検討中の経営者の方からのご相談をお待ちしています。

銀行に期待できない線

ここからは、期待しすぎないほうがよい部分に入ります。意外に思われるかもしれませんが、その根拠は金融庁の文書そのものにあります。

指針自身が認める利益相反

監督指針 Ⅱ-5-1(経緯)には、こう書かれています。金融機関が顧客企業の経営改善・再建支援を行うにあたって「債権者としての立場との利益相反が懸念される場合」がある。これを防ぐ観点からも「中立的な立場で関与できる外部専門家や外部機関等との連携は有効である」。着眼点そのものではなく、指針がこの形に整理されるに至った経緯の部分に置かれた一節です。

銀行は債権者です。貸したお金を返してもらう立場と、経営者にとって最善の承継先を考える立場は、いつも同じ方向を向くとは限りません。その可能性を、監督する側が文書に書いている。

ですから「銀行は中立的な立場で助言してくれる」という前提は置かないほうが安全です。銀行が悪いという話ではなく、立場の構造としてそうなっている、ということです。

相手探しは行により異なる

承継相手は銀行が探してくれるのか。監督指針 Ⅱ-5-2-1 は、事業承継が必要な顧客企業に提案するソリューションとして、M&A支援(マッチング支援、M&A仲介業務、フィナンシャル・アドバイザー業務、PMI支援など)を挙げています。事業承継・引継ぎ支援センターとの連携によるマッチングも、同じ箇所に並びます。相手探しは、想定の外にあるわけではありません。

ただし同じ Ⅱ-5-2-1 は、冒頭で「これら全てを一律・網羅的に求めるものではない」とも書いています。どこまで対応するかは、銀行によって変わるということです。だから射程は、一般論ではなく自行に引く。M&A支援を自行で手がけるのか、外部へつなぐのか。そこを先に確かめるのが実務解です。

行政の文書がどこまで踏み込んで書いているかも、見ておきましょう。2026事務年度金融行政方針の本文を通して読むと、「事業承継」という語が出てくるのは2か所だけです。いずれも「(2)地域金融力の強化」の中にあります。「後継者」「廃業」という語は、本文に出てきません。

これを「金融庁は事業承継を軽視している」と読むのは、早計です。同じ方針の脚注1には、この方針が「金融戦略(別添)との記載の重複を避けつつ、補完が必要な項目を中心に作成したもの」だと明記されています。厚く書かれていない理由が、文書自身に書いてあるわけです。

一律の対応は求めていない

なぜ銀行によって対応が違うのか。答えは監督指針そのものに書かれています。

Ⅱ-5-3 の冒頭は、着眼点に定める内容や水準を、各金融機関が自らの規模や特性を踏まえて決めるべきものだとしています。指針の言葉では「自主的な経営判断により決定されるべきもの」。そのうえで「金融機関に一律・画一的な対応を求めるものではない」と明記しています。

制度がそう設計されている以上、A行で得られた対応がB行でも同じとは限りません。同じ銀行でも、支店や担当者で差が出ます。ここは前提として受け止めておくところです。

⚠️ 注意
「メインバンクに相談するのが正解」という単純な話ではありません。監督指針は銀行に一律の対応を求めておらず、指針自身が利益相反の可能性にも触れています。銀行を使うかどうかではなく、銀行に何を尋ね、何を別の相手に尋ねるかを分けて考えるほうが、実務に合います。

情報はどこまで回るか

相談すると、自分の会社の話がどこまで広がるのか。切り出せない理由の一つが、これではないでしょうか。この章で答えを出します。

同意が前提と書いてある

監督指針 Ⅱ-5-3(4) の注が、正面から答えています。金融機関が保有する顧客企業の経営に関する情報を連携先と共有する場合には、「顧客企業の同意が前提となる」ことに留意する必要がある、と。

一方で、金融機関の内部で相談内容がどう共有されるかを定めた規定は、監督指針にも2026事務年度金融行政方針にも見当たりません。行内の取り扱いは各行の運用によります。気になる場合は、面談の場で「この話は、どの範囲で共有されますか」と尋ねて差し支えありません。

相談した内容が、こちらの知らないところで連携先へ流れていく——そうした前提には立っていません。裏を返せば、同意を求められる場面が来るということです。なお、これは監督上の留意事項であって、個人情報保護法上の同意要件そのものではありません。どこまで共有してよいかを、あらかじめ自分の中で決めておく価値があります。

決めておく線は、外部機関への共有だけではありません。取引先や従業員に伝わる可能性をどう見るかも、同意を求められる前に自分の中で整理しておくところです。

連携先に挙がる顔ぶれ

では、銀行はどこと連携するのでしょうか。同じ Ⅱ-5-3(4) は、外部専門家として税理士・弁護士・公認会計士・中小企業診断士などを挙げています。外部機関としては、事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所、中小企業活性化協議会など。連携できる態勢の整備に努めているかを問うています。

そして、顧客企業が事業再生・業種転換・事業承継・廃業などの支援を必要とする状況にある場合。「判断を先送りせず」に外部の視点や知見を積極的に活用しているか、とも書かれています。銀行自身による支援に加えて、必要に応じて外部専門家・外部機関を積極的に活用する。指針が想定しているのは、その形です。

📋 この章のまとめ
・連携先への情報共有は「顧客企業の同意が前提」と監督指針の注に明記
・連携先には税理士・弁護士等の専門家と、事業承継・引継ぎ支援センター等の機関が並ぶ
・事業承継の局面では「判断を先送りせず」外部を活用しているかが着眼点

相談前に整理する三点

ここまでの内容を、手を動かせる形にします。銀行を訪ねる前に、手元でできることがあります。

手元で確かめておくこと

  • 1

    保証契約の現況を並べる。どの借入れに、誰が、いくらの保証を付けているか。変更・解除の条件を、これまで書面で説明されたことがあるかも確かめます。

  • 2

    相談の位置づけを言葉にする。情報収集の段階なのか、具体的な検討に入っているのか。面談の冒頭で伝えられるよう、一文にしておきます。先に触れたとおり、承継の相談ではなく保証の相談として始める入口を選ぶなら、その切り出し方もここで決めておきます。

  • 3

    共有してよい範囲を決める。外部機関との連携では同意を求められます。どこまでなら差し支えないかを、先に自分で線引きしておきます。

参考
銀行ごとの保証の運用に差があることは公表データからも読み取れます。読み方は事業承継の経営者保証、銀行別データはどう読むかで整理しています。

聞き方を決めておく

同じ面談でも、尋ねる内容によって得られるものが変わります。下の表は、これまで見てきた監督指針の着眼点をもとに、銀行に尋ねやすい事項と、答えが出にくい事項を分けたものです。

銀行に尋ねやすいこと 答えが出にくいこと
保証がなぜ必要か、どう改善すれば見直しの可能性が高まるか(Ⅱ-10-2(6) の説明事項) 承継相手として誰がふさわしいかという、こちらの立場に立った評価
株主が変わる場合の保証契約の扱い(Ⅱ-10-2(1) の注に明記) 譲渡価格の水準や条件交渉の進め方をめぐる中立的な助言
自行のM&A支援の範囲と対価、M&A支援機関登録制度への登録の有無 相談したことが今後の与信判断にどう影響するかの確約
外部専門家・外部機関につなぐ場合の連携先と、情報共有の範囲 他行や他機関の対応水準との比較
✅ 実践ポイント
右側の列を銀行に求めると、期待と対応がすれ違います。右側は、中立的な立場で関われる相手に持っていく。監督指針 Ⅱ-5-1 が外部専門家との連携を有効としているのは、まさにこの部分です。連携態勢の整備そのものを着眼点に据えているのは Ⅱ-5-3(4) です。銀行がフィナンシャル・アドバイザーとして関わる場合もありますが、その助言は中立ではなく一方の当事者に立つものです。左右を分けて臨むだけで、面談の手応えは変わります。
✅ 明日の面談、この順で
① 冒頭で位置づけを伝える——「今日は情報収集の段階で、具体的な予定があるわけではありません」
② 入口は保証から——「承継の話」ではなく「保証の見直しの相談」として切り出す
③ 尋ねる——保証見直しでいま何を提示してもらえるか/M&A支援は自行か他機関か/登録制度と対価
④ 説明を受けたら——「書面で整理していただけますか」と依頼する(監督指針 Ⅱ-10-2(6))
⑤ 立場を確かめる——承継相手や条件の助言を受けるなら、融資銀行・紹介者・仲介者・FAのどの立場での関与か
⑥ 求めない——与信への影響の確約

銀行と併せて使う窓口

銀行一本で足りるのでしょうか。制度の建て付けから見ると、答えは「銀行だけに限っていない」です。

銀行一本でよいのか

監督指針が銀行に求めているのは、外部専門家・外部機関と連携できる態勢を整えることでした。銀行自身が支援を手がけることもあれば、必要に応じて外部へつなぐこともある。指針はその両方を想定しています。銀行一本に絞る理由も、銀行を外す理由も、制度の側にはありません。

公的窓口は全国47都道府県48か所に置かれています(出典:前掲・独立行政法人中小企業基盤整備機構 2026年5月29日公表資料)。顧問税理士、商工会議所、認定経営革新等支援機関も選択肢です。どこをどう組み合わせるかは、会社の状況で変わります。

譲り受ける側に直接聞く

もう一つ、あまり知られていない選択肢があります。譲り受ける側の会社に、直接尋ねるという方法です。仲介者を介さないぶん、相手が何を見て、何を大切にするのかが、そのまま返ってきます。

なお、ここまでは一般的な相談先の話です。当社(株式会社SDアドバイザーズ)は、「40人の社員がいる会社を40社つくる」という4040 VISIONを掲げています。自社自身が譲り受ける側として活動する会社です。当社が譲渡先としてどう引き受けるか当社の事業承継の流れでご覧いただけます(当社グループのご紹介です)。

📋 この章のまとめ
・監督指針は、銀行自身による支援に加えて外部専門家・外部機関の積極的な活用も想定している
・公的窓口は全国47都道府県48か所。顧問税理士、商工会議所、認定経営革新等支援機関も選択肢
・譲り受ける側に直接尋ねる道もある。仲介者を介さないぶん、相手の判断基準がそのまま返る

線を引いてから話す

最後に、冒頭の問いに戻ります。

この記事の答え

取引銀行に事業承継を相談してよいか。監督指針は、経営者保証をめぐる相談へ適切に対応できる態勢が整っているかを着眼点に挙げています。相談は想定された行為です。ためらう理由を、制度の側に探す必要はありません。

一方で、銀行は債権者でもあります。指針自身が利益相反の可能性に触れ、中立的な外部専門家との連携を有効としています。銀行がM&A支援まで行う場合もありますが、融資銀行、紹介者、仲介者、フィナンシャル・アドバイザーでは立場が異なります。承継相手や譲渡条件について助言を受けるなら、銀行がどの立場で関与しているのか、利益相反をどう管理しているのかを確かめておくところです。

保証と融資の話は銀行へ。誰に託すかの話は、立場を確かめたうえで聞く。中立的に関われる相手や、譲り受ける側そのものにも当たってみる。線を引いてから話し始めれば、切り出すことは怖くなくなります。

一人で抱え込まず、まず話を聞いてもらうだけでも、見えてくるものがあります。

📋 この記事のまとめ
・相談してよい。監督指針が経営者保証の相談対応の態勢を着眼点に挙げている
・ただし対応は各行の自主的な経営判断によるため、銀行ごとに差が出る
・承継相手や条件の助言を受けるときは、銀行がどの立場で関与しているかを先に確かめる
会社を託す相手を選ぶ、その前のお話から。

私たちは仲介者ではなく、お迎えする側です。

株式会社SDアドバイザーズは、M&A仲介・アドバイザリー会社ではありません。事業を譲り受ける側として、ともにグループの未来を築く経営者の方をお迎えしています。まだ取引銀行にも切り出していない、という段階でも、一度お話を聞かせてください。譲渡を急かすことはいたしません。

参考文献・出典
・金融庁「2026事務年度金融行政方針」本文(2026年9月15日公表)
https://www.fsa.go.jp/news/r8/202609/strategic_priorities_2026_main.pdf
・金融庁 2026事務年度金融行政方針 公表ページ
https://www.fsa.go.jp/news/r8/202609/260915.html
・金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年8月/令和8年8月17日適用)
https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho/index.html
・金融庁「検査マニュアル廃止後の引当に関する取組み」(金融検査マニュアルは令和元年12月に廃止)
https://www.fsa.go.jp/policy/yuushidpmst/index.html
・金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月)
https://www.fsa.go.jp/common/law/yushidp_final.pdf
・独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」(2026年5月29日)
https://www.smrj.go.jp/press/2026/hkj3i8000000cu5o-att/20260529_press01.pdf
・中小企業庁「M&A支援機関登録制度 公募要領」(令和8年度)
https://ma-shienkikan.go.jp/
・帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」(2025年11月21日)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
監修:株式会社SDアドバイザーズ 事業承継グループ
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。

「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。

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