会社の譲渡価格はどう決まるのか|買い手の”リアルな思考”を大公開

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M&Aを検討している経営者の方にとって、「自分の会社はいくらで売れるのか」は最も気になることの一つです。仲介会社から提示された金額に納得できない、そもそも価格の決まり方がわからない、という声は少なくありません。

今回は、M&Aによるグループ経営を実践してきたSDアドバイザーズ代表・高木に、譲渡価格の決まり方から、DD(デューデリジェンス:買収前の詳細調査)での価格変動、売り手が持ちがちな誤解まで、率直に語ってもらいました。

純資産プラス営業利益の3年分――ただし現場の判断はもっと複雑

譲渡価格には業界として広く使われる基準があります。ただし、その計算式だけで価格が決まるわけではありません。現場での生々しい判断軸まで、実態を聞きました。

── 譲渡価格はどうやって決まるのでしょうか。

教科書的な話をすると、純資産価格プラス営業利益の3年分というのがひとつの基準としてありますよね。ただ、会社の成長性などを考慮した上で、その3年を2年にしよう、1年にしよう、あるいは5年以上にしようというのは当然あります。今まで3年分よりプラスにしてオファーを出したケースも、逆に1年分だけにしたケースも、どちらもあります。

── 価格の妥当性は、計算式以外でどうやって確認するんですか。

その価格の妥当性を見るために、色んな観点で評価することもあります。例えばエンジニア中心の会社なら、エンジニアを採用するための費用で試算することがあります。人材紹介会社経由の採用費は年収の35%というのが結構一般的じゃないですか。「社員数×年収×35%」で試算した金額を、別の物差しとして使うんですよ。それで決めるというよりも、価格の妥当性を確認するための補助線として使う感じですね。

プロダクト(自社開発のソフトウェアなど)を持っている会社なら、「自分たちで同じものを作ったらいくらかかるか」から評価することもあります。そのプロダクトに5000万円かかっているとなれば、丸ごと5000万円ではなくても、少し値引いて3000万円でどうですかという形になります。数字の根拠がある提示であれば、売り主さんも納得感を持ちやすいと思っています。

価格で一番見ているのは社員の平均年齢だ――財務だけでは見えない3つの軸

計算式を超えたところに、高木が特に重視している指標があります。財務諸表だけでは見えない、独自の判断軸を聞きました。

── 実際のところ、価格計算で一番見ている項目は何ですか。

一番注目しているのは社員の平均年齢ですかね。これからどれだけ一緒に仕事をやっていけるかということが非常に重要なので。SDアドバイザーズのボリュームゾーンが30代ということもありますけど、同じ年齢層だとなじみやすいです。

── 他に価格を決める時によく見る項目はありますか。

交際費も見ますね。少ない交際費だと、真面目に経営されてるんだろうなということでプラスになります。あとは取引先の顔ぶれもよく見ますよ。そこを開拓するのが難しいとか大変だから価値がある、というのは分かりやすい判断軸になります。

「借金があるから従業員に譲れない」――経営者保証を買い手が外す理由

「価格を上げるために事前にできることはあるか」という問いから、あまり語られない実態が見えてきました。後継者候補の有無と、経営者保証の問題が密接に絡み合っています。

── 売り手が事前にやれることで、価格が上がりそうなことはありますか。

後継者候補がいるかどうかは、すごく重要なポイントだと思っています。グループにジョインしてもらった時に、会社がある程度自立して回ってほしいというのがあるので。中心となる人物がすでにいるのかいないのかは、すごく重視していますよね。

── 後継者候補がいるなら、そもそも売却しないんじゃないかとも思うんですが。

現場を回せる管理職やマネージャーもそうですし、会社によっては「本来は次の経営者でいいのに、経営者になるのは難しい」という状況があるんですよ。例えば、会社に借金がたくさんあって、社長が連帯保証人になっているケースです。新しい経営者候補がその保証を引き継げないことがありますよね。仮に本人がOKだとしても、奥さんが許さない場合も多いでしょうし。

そういう時は、連帯保証を我々が外した上で、次の経営者候補が会社を運営するという環境を作ることができます。所有と経営の分離ですね。実際に過去のケースで、承継させたいという経営者候補がいたんですけど、会社の借金があって保証をお願いできないということで、我々が保証を外してきたことがありますよ。

── それはSDアドバイザーズ側のリスクにもなると思うんですが。

もちろん何年でどれくらい返済するかというシミュレーションはありますよ。ただそれ以上に、我々の仲間になってもらって社員が頑張ることで利益がどんどん増えていくという例が過去にもあるので、心配していません。

金額が下がらないための注意点――実際にあった2つの事例

意向表明で提示した金額が、DD後に変わることがあります。どういうケースで変動するのか、過去の実例を聞きました。

── DDを経て最終的に金額が変わったケースはありますか。

正直あんまりないですが、少ない中でもあったのは、社会保険料の未納があったケースです。その分発生する費用を譲渡対価から引いたことがあります。

もう一つは、もともと売り主さんから提示されていた事業計画と、DDできっちり査定した数字があまりにも乖離(かいり)していたということで、その分を引いたことがあります。なんとなく下げるとお互い納得感がないので、きっちり数字で示します。

どのような場合に金額が上がるか――合理的理由が大切

長年M&Aに関わってきた高木の価格交渉に対するスタンスは、明確でシンプルです。

── 交渉途中で「もっと金額を上げてほしい」という要求が来た場合はどうしますか。

まったく理由なく、価格を上げるのは難しいです。ただし「これくらい利益が見込める」「この経費がかからない分がある」といった合理的な根拠があり納得感があれば全然応じますよ。

おわりに

「純資産プラス営業利益の3年分」という基準の裏には、社員の平均年齢、交際費、取引先の顔ぶれ、後継者候補の有無といった、経験に基づく独自の判断軸がありました。価格の「納得感」を大切にし、説得するのではなく現実を丁寧に伝えるというスタンスも、SDアドバイザーズらしい姿勢の一つです。事業承継・M&Aを検討している中小企業の経営者の方は、まずは気軽にご相談ください。

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代表取締役 高木栄児