譲渡企業の社員の本音|「乗っ取られる」から「チャンスだ」に変わった理由

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事業承継・M&A(会社の合併・買収)を検討している経営者の方の中には、「社員がどう受け取るか」を最も心配されている方も多いのではないでしょうか。今回は、実際にグループジョインを経験した当事者に、当時の気持ちから1年後の今まで、生々しい本音を語っていただきました。

SDアドバイザーズグループには現在、フジサービス株式会社が加わっています。今回は同社の木村さん(印刷事業部・社歴16年)と寺田さん(ITソリューション事業部・社歴18年)に、グループジョインから1年が経った今の本音を聞きました。なお、今回ご登場いただいた木村さんは、SDアドバイザーズのYouTubeチャンネルの動画編集も担当しています。インタビューの動画版もそちらからご覧いただけます。
【乗っ取られたと思った】 事業承継を経験した社員が本音で語る、M&A後のリアルな変化

本記事は、SDアドバイザーズのPMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)に関する内容です。あわせて以下の関連ブログもご参照ください。

M&Aを知った瞬間――突然の知らせと最初の不安

M&Aの成立を、フジサービスの社員はどんな状況で知ったのか。まずそこから話は始まります。

── M&Aを知った時の状況と、率直な気持ちを教えてください。

木村さん:ある朝、9時半ごろに前社長から「話がある」と呼び出されました。そこで「30分後に新社長から挨拶があるから」といきなり知らされたんです。なんのこっちゃと固まってしまいました。話を聞いてからしばらくの間は、言い方が悪いですけど「乗っ取られちゃうのかな」「どんな仕事をさせられるんだろう」という気持ちが頭から離れなかったですね。

寺田さん:私も突然でびっくりしました。最初は「なんでうちの会社が?」という感じでしたね。

── 一番不安だったことは何でしたか。

木村さん:「クビになるのかな」ということです。私は印刷事業の人間なので業務も違いますし、今の仕事をやり続けられるのかも分かりませんでした。

寺田さん:フジサービスのメンバーがバラバラの会社に配属されてしまうのではないかという不安がありました。お客様先に常駐しているので、今の常駐先を続けられるのかも気になりましたね。

── 社内でそういった不安を話し合うことはありましたか。

木村さん:雑談レベルで「どうなっちゃうんだろうね」という話はしていました。ただ積極的に連絡を取り合うことはなかったですね。驚きすぎて、誰かに連絡するという発想自体が出てこなかったんだと思います。

寺田さん:私は気心の知れた同僚を個人的に誘って、飲みながら「これからどうする?」という話をしたりしていました。そういう場を持つかどうかは人によると思いますけどね。

── ご家族にはどのように伝えましたか。

木村さん:家族には事実だけ伝えましたが、最初のころはあまりネガティブなことは言っていないです。どうなるかはまったく見えなかったので。家族の反応も「頑張るしかないんじゃない?」という感じでした。

不安はどう解消されたか――説明会・個別面談・懇親会を経て

突然の知らせで不安を抱えた状態から、どのようにして気持ちが変化していったのか。SDアドバイザーズが実践してきた初期のコミュニケーションのプロセスを、当事者の視点で振り返ります。

── 不安はどうやって解消されていきましたか。

木村さん:高木さんによる説明会では「質問があれば何でも聞いてください」と言っていただいたんですが、何を質問したらいいのか全くわかりませんでした。そもそも「新社長って、あなた誰ですか?」という状態でしたし、当時は悪い人が乗っ取りに来たと思っていましたから(笑)

不安が解消されていったのは、その後に設けてもらったランチ会の場が大きかったです。直接話してみると、気軽に言いやすかったですし、質問も聞きやすかったんですよね。

寺田さん:個別に話せる個別面談の場があって、前向きな気持ちになれました。お客様先に常駐しているので会社のことよりも派遣先のことを考えている比率が大きかったんですが、むしろグループジョインを機に会社のことも考えようという気持ちになれたんです。

── ランチ会に至るまでのエピソードを聞かせてください。

木村さん:印刷チームはもともと業種・業態が違うこともあって、どちらかというと反抗的だったと思います。最初のころは飲み会があってもチームメンバーのほとんどが顔を出さなかったですし、私個人としても「行きたくないな」という気持ちがありました。

そのころですかね。あるタイミングで、SDアドバイザーズグループ内の連絡ツールに登録させられて、みんなアイコンを自分の顔にしてくださいと言われました。反抗心からプライベートで活動しているバンド活動時の写真にして、YouTubeのライブの動画も貼り付けて「見てください」って言ったんです(笑)そうしたら高木さんが真っ先に「いいね」をしてくれて、「かっこいいですね!」とコメントをくれました。ちょっとびっくりしましたね。同時に、自分もこのグループで受け入れられるのかもしれないという淡い期待も抱きはじめたかもしれません。

1ヶ月ほどして、飲み会やイベントを渋っていた印刷チームが、高木さんとランチをしないといけないことになって、「えー、行かなきゃいけないのか」と思いながら参加しました。でも食事してみたら「あれやれ、これやれ」なんて一切言われなくて、世間話が中心でした。「こんな見た目ですがゴルフやるんです。よかったら今度一緒にやりましょう」みたいに言っていただいて、「そんなに気さくな人だったの」と驚きましたね。最初に悪い人だと思っていたので、普通にしていても好印象になったのかもしれません(笑)そのランチの席では、あのバンド動画の話題もふっていただいて、「僕もバンドやってました!」と言われて、一気に距離が縮まりました。

「急激な変化はさせない」は本当だったのか――1年間で実感したこと

高木代表がPMIで一貫して語ってきた「急激な変化はさせない」という言葉。その約束は実際に守られていたのか。当事者に率直に聞きました。

── 業務のやり方で変わったことはありましたか。

木村さん:本当に何も変わっていないです。何かをやめろと言われたことも、やれと言われたこともないですし、仕事のやり方について何か言われたことは一度もありません。

寺田さん:仕事の進め方に「こうしろ、ああしろ」はないですが、働く環境は変わりました。事業推進会議ができたり、帰社日ができたりしています。私はもともとお客様先に常駐する仕事なので、以前はフジサービスに戻る機会もほとんどなかったんですが、帰社日ができたことで会社のことを考えるようになりました。

それから個人的に高木さんから資格の取得も勧めていただきました。初めは勢いで乗っかっちゃって後悔してました。勉強なんて本格的にしたことがなくて(笑)
大変でしたけど結果的に取れたので、やってよかったと思っています。

── 資格取得に挑戦されたんですね。

寺田さん:取得したのはPMP(Project Management Professional:プロジェクトマネジメントの国際資格)です。今までは自己流で、先輩に教えてもらった仕事の進め方しか知らなかったんですが、こういうやり方もあるのかと気づきになりました。受験にあたって結構なお金がかかるんですが、会社に負担していただく形で快く受けさせてもらえました。本当に挑戦を応援してくれる会社なんだと実感しましたね。

── 逆に、以前の方が良かったと感じることはありましたか。

木村さん:連絡ツールですね。以前はLINEでやりとりしていたんですが、グループの共通ツールに切り替わって、なかなかなじめないでいます(笑)ただ逆に言うと、困ったのはそれくらいだったということかもしれないですが。

寺田さん:やる仕事が増えて大変です(笑) ただそれも全部自分から動いていることで、悪い話じゃないかもしれませんね。

グループに入って変わったこと――チャンスを活かした1年

業務のやり方は変わっていなくても、個人として大きな変化が生まれたそうです。特に木村さんにとってのこの1年は、思いがけない形で新たな扉が開いた1年でした。

── グループジョイン後のリアルな変化を教えてください。

木村さん:フジサービスの中では自分が一番変わったんじゃないかと思います。印刷チームでの業務自体は変わっていないんですが、SDアドバイザーズのYouTubeチャンネルの編集を担当するようになりました。

もともと個人的にYouTubeの撮影・編集を5年ほどやっていて、以前自社で企画書を出したことがあるんですが、仕事にはつながりませんでした。ですがグループに入った後、SDアドバイザーズグループの社員さんが私のYouTube活動のことをどこからか知ってくれたんです。その社員さんがいつの間にか作ってくれた企画書が高木さんに承認され、トントン拍子でチャンネルの編集を担当するようになりました。どう活かしたらいいか分からなかったことが、すごいスピードで仕事になってびっくりしました。

SDアドバイザーズグループの皆さんは相談すると一緒に考えて動いてくれますし、話がどんどん広がっていく感覚があります。社長も提案に対して「いいね、それ!」と気楽に言ってくれて、提案しやすい空気なんです。それだけ応援してもらえると、やっぱり会社のために貢献しなきゃって思えますよね。どちらかというともともとは、自分のために動くタイプの人間だったんですが(笑)これが、一番大きな変化かもしれないですね。

寺田さん:私が感じた変化は、グループ間で連携しながら仕事をできるようになったことです。加えて、SDアドバイザーズグループの雰囲気に影響されて、フジサービス内の社員同士のつながりも以前より密になりました。

グループの人たちと初めて会った時――距離が縮まるまでの道のり

グループに加わった後、他のグループ会社の社員たちとどう関係を築いていったのか。最初の印象と、その後の変化を振り返ります。

── グループ先の会社の人たちと初めて会った時の印象はどうでしたか。

木村さん:年齢層も雰囲気も違ってびっくりしました。特に社内報を見ると若手の方々がボウリング部や軽音楽部をやっていて、ここに入り込めるのかなと尻込みしました。フジサービスにはそういった交流の文化がほとんどなかったんです。でも、実際に会ってみると、SDアドバイザーズグループの皆さんは優しい方ばかりで驚きました。「お前らあとから来たんだろ?」みたいな雰囲気かと思っていたら真逆で、「仲間だよね」という空気感があって、それがとても嬉しかったです。

寺田さん:私がグループの方と初めて会ったのはゴルフコンペでした。初めての方ばかりでどうしようかと思っていたんですが、皆さんの方から挨拶しに来てくれたんです。すごく気を使ってくれている印象でした。もともとSNSでしかお見掛けしていなかった方ばかりでしたが、やはり直接会うと距離がぐっと縮まりますね。

他の社員も個別にBBQイベントやその後の二次会に参加していたみたいで、同じような印象を受けていたみたいです。

「買収された側」として――肩身の狭い思いはあったか

グループに加わった後、「買収された側」という肩身の狭さを感じることはなかったのか。率直な声を聞きました。

── 肩身の狭い思いをしたことはありましたか。

木村さん:むしろ気を使っていただいてすみませんという気持ちになるくらいです。仕事をグループ内で頼むとすぐ動いてくれますし、今まで以上に自分も頑張らなきゃなという気持ちになります。

スピード感とフットワークには本当に驚かされますね。ちょっと私がアイデアを出すと「それ社長に提案しましょうよ!」なんて言われて。びくびくしながら提案したら、社長から秒でOKの返事が来る。本当に空気感が違うなと思います。

寺田さん:若い方が多いので一緒になれるのかなという不安は最初ありました。でも気を使っていただけますし、肩身が狭いという気持ちはいつの間にかなくなっていました。

── 辞めようと思ったことはありましたか。

木村さん:私は60歳の定年になりましたが、もしあまりにも給与が下がるようなら辞めようと思っていました。そこは高木さんにも前社長にもお気遣いいただいて、ほぼ変わらずという形にしていただきました。グループの雰囲気も相まって、これならやっていけると思いました。

寺田さん:実は最初は辞めようかとも思っていました。M&Aって、いいとこだけ取られて、元の会社がちりじりになってしまうイメージがあったんです。フジサービスの社員が別々の会社に配属されてしまうのかなと思っていました。でも面談やYouTubeで話す高木さんを見て、考え方や目指していることに共感したのもあって、もっとこの環境で挑戦したいなと思えました。

今後やりたいこと――グループに入ったからこそ見えてきた可能性

グループジョインから1年を経て、二人の視線は前を向いています。

── 今後やってみたいこと、挑戦したいことはありますか。

木村さん:グループ内でのコラボレーションをもっとやっていきたいです。また今のYouTubeチャンネルの活動もこれだけで終わらせたくないですね。将来は賛同してくれるメンバーを集めて、広報事業部や動画事業部のようなものを立ち上げたいと思っています。そのためにはまず、今のYouTubeチャンネルで結果を出したいですね。

寺田さん:取得したPMPの知識をフジサービスの社員に教えたいという気持ちがあります。勉強していく中で、自分が全部知らなきゃいけないんじゃなくて、専門家と一緒に協力しながら進めていく能力があればいいんだということを実感しました。最終的には人と人とのつながりが仕事において大切だと感じています。その考え方を周りに伝えていきたいと思っています。

悩んでいる経営者の方へ――経験者からのメッセージ

M&Aを検討している売り主側へ、従業員の立場から言葉を届けます。

── 事業承継・M&Aを悩んでいる経営者の方に向けて、メッセージをお願いします。

木村さん:自分でこんなに変われるとも、こんなにチャンスがあるとも思っていませんでした。発信すれば誰かが拾ってくれて、バックアップしてくれます。自分がやりたくて得意なことを活かしてやれる環境だと思います。

寺田さん:勝手に持っていたM&Aのイメージが変わりました。自分たちがやりたいことができると感じています。あとは自分たちがどうやっていくかだと思います。

おわりに

「乗っ取られるんじゃないか」という不安から始まり、1年後には「チャンスだと思った」と語るまでになった木村さん。派遣先優先だった意識が「会社のことも考えよう」に変わった寺田さん。二人の言葉は、事業承継後の社員がどう変わっていくかを、当事者の目線で伝えています。SDアドバイザーズでは、事業承継・M&Aを検討している中小企業の経営者の方々とともに、丁寧なプロセスでPMIに取り組んでいます。

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代表取締役 高木栄児