事業承継・M&Aの件数は増加中|地方・小規模企業でも買い手が見つかる理由をデータで解説
「うちみたいな小さな会社を、本当に買ってくれる人などいるのだろうか。」
そう感じながらも、後継者が見つからず、廃業だけは避けたいと思っている経営者の方は、実はとても多くいらっしゃいます。特に地方の中小企業・小規模企業の経営者ほど、「自分の会社はM&Aの対象にならない」という思い込みを持ちやすい傾向があります。
結論からお伝えします。事業承継・M&Aの成約件数は年々増え続けており、地方の小規模企業でも買い手が見つかるケースは確実に増えています。この記事では、公的機関のデータをもとに、その理由と仕組みをわかりやすく解説します。
目次
事業承継・M&Aの成約件数は増加している — データが示す市場の実態
「M&Aは大企業だけの話」というイメージをお持ちの方は少なくないと思います。しかし実際のデータを見ると、中小企業のM&A市場は大きく拡大しています。
公的機関のデータで見るM&A件数の推移
中小企業庁が全国47都道府県に設置している「事業承継・引継ぎ支援センター」(=国が無料で運営するM&A相談・マッチング機関)の実績は、年々増加しています。2022年度の相談件数は65,000件を超え、成約件数も右肩上がりで増加傾向にあります(出典:中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センターの取組について」)。
また、帝国データバンクの調査(2024年)によると、後継者が決まっていない企業の割合(後継者不在率)は全国で53.9%にのぼります(出典:帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査(2024年)」)。この「後継者がいない会社」の多くが、M&Aによる第三者承継という選択肢に向かっているのです。
後継者不在率53.9%という数字は、日本全国で約半数以上の中小企業が後継者問題を抱えていることを意味します。裏を返せば、「同じ悩みを抱える経営者が非常に多い」ということ。孤独に悩む必要はありません。
なぜ今、中小企業M&Aの件数が増えているのか
件数が増えている背景には、社会的・制度的な変化があります。以下の3点が特に大きな要因です。
以下の表は、中小企業M&Aの件数増加を支える主な背景を整理したものです。
| 背景 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①後継者問題の深刻化 | 後継者不在率53.9%(2024年・帝国データバンク)という現実が、経営者のM&Aへの関心を高めている。廃業の前に「売れないか」と考える経営者が増えている。 |
| ②国の政策的支援の充実 | 中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)の整備、事業承継・引継ぎ補助金、無料相談窓口の全国展開など、国の後押しが年々強化されている(出典:中小企業庁)。 |
| ③M&Aインフラの整備 | マッチングプラットフォームの普及や仲介会社の増加により、小規模・低価格帯の案件でも売り手と買い手をつなぐ仕組みが整ってきた。 |
・事業承継・M&Aの件数は年々増加しており、中小企業の市場は拡大している
・後継者不在率53.9%という社会課題が、M&Aへの注目を高めている
・国の制度・インフラが整備され、小さな会社でも動きやすくなってきた
「自分の業種・規模では売れないのでは」という疑問に答える
「製造業や大きな会社の話で、うちのような業種・規模では無理なのでは」とお考えの経営者の方も多いと思います。実際のところを、データに基づいてお伝えします。
業種は問わない — 幅広い分野で成約が成立している
事業承継・引継ぎ支援センターの成約実績には、製造業・建設業・小売業・飲食業・介護・運輸・IT・農業など、非常に幅広い業種が含まれています。「この業種では売れない」という例外的な業種はほとんどなく、地域に根ざした小規模なサービス業でも成約が成立しています。
買い手が評価するのは「業種の華やかさ」ではありません。その会社でなければ持てない「見えない資産」です。
・長年にわたって築いた顧客・取引先との信頼関係
・職人技・独自技術・特殊なノウハウ
・地域内での知名度・ブランドの蓄積
・建設業許可・医療・介護施設の指定などの許認可
・優秀な従業員と安定した組織体制
これらは、買い手が一から築くのに何年もかかる価値です。
規模は問わない — 小規模・零細企業でも成約できる理由
「売上が小さすぎる」「利益が出ていない」という理由でM&Aをあきらめている経営者の方もいらっしゃいます。しかし、M&Aで評価される企業価値は、直近の利益だけで決まるわけではありません。
買い手にとっては、「ゼロから市場参入するコスト」と「M&Aで会社ごと取得するコスト」の比較が重要です。地域での顧客基盤や許認可を持つ小規模企業の買収は、新規参入コストを大幅に下げる手段として評価されることがあります。
・業種を問わず、幅広い分野でM&A成約が成立している
・規模・業績だけで価値は決まらない。「見えない資産」が評価される
・買い手は「ゼロから参入するコスト」との比較でM&Aを検討している
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
地方企業でも買い手が見つかる3つの理由
「都市部の話では?」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地方の中小企業M&Aは着実に増えています。その理由を3点に整理してお伝えします。
理由① 都市部企業の地方進出需要が高まっている
都市部で成長した企業が、地方での事業拡大を目的にM&Aを活用するケースが増えています。地方に進出しようとする場合、ゼロから店舗・拠点を立ち上げるよりも、すでに地域に根ざした会社を買収するほうが、はるかに早く・確実に市場参入できます。
地元での顧客基盤・知名度・従業員・取引先ネットワークは、外部から参入しようとする企業にとって「何年分もの積み上げ」です。地方企業ほど、こうした価値を持っていることが多いのです。
理由② 地域インフラとしての「替えのきかない価値」がある
建設業・運輸業・医療・介護・食品製造など、地域生活に欠かせない業種の会社は、その地域における「インフラ」としての価値があります。こうした会社が廃業すると地域住民の生活に影響が出るため、行政・地域金融機関・地元企業などが後継者を積極的に探すケースもあります。
・地域の行政・公共機関との長年の取引実績
・創業30年以上の地元ブランド・信頼の蓄積
・地域内でのシェアが高く、競合が少ない安定市場
・都市部より低い地価・賃料によるコスト構造の優位性
・地域雇用を守る社会的な意義
理由③ 国の政策が「地方M&A」を強力に後押ししている
中小企業庁は、事業承継・引継ぎ支援センターを全国47都道府県に設置し、地方の中小企業のM&Aを無料でサポートしています。また、事業承継・引継ぎ補助金(専門家費用等に最大800万円)など、地方企業が活用できる公的支援制度も整備されています(出典:中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センター」「事業承継・引継ぎ補助金」)。
手続きの流れについては、SDアドバイザーズの事業承継の流れページもあわせてご参照ください。
・都市部企業の地方進出需要により、地方企業への買収ニーズは確実に存在する
・地域インフラとしての価値・長年の信頼・安定市場は買い手に評価される
・国の政策支援により、地方企業でもM&Aを進めやすい環境が整っている
M&Aプラットフォームの普及が変えた「小さな会社の売り方」
以前は、M&Aといえば大企業や億単位の案件が中心でした。しかし近年、小規模企業でも活用できる環境が大きく変わっています。その中心にあるのが「M&Aプラットフォーム」の普及です。
プラットフォームで変わったマッチングの仕組み
M&Aマッチングプラットフォームとは、売り手と買い手をインターネット上でつなぐサービスです(=ネット上のM&A仲介サービス)。従来の仲介会社では対応が難しかった小規模・低価格帯の案件でも、全国の買い手候補に一度に情報を届けられるようになりました。
- 売却希望価格が数百万円〜数千万円規模の「小型案件」でも対応可能
- 秘密保持の仕組みが整い、会社名を伏せたまま買い手候補に打診できる
- 全国の買い手候補に同時に情報を届けられるため、マッチングの速度が上がった
着手金なし・成功報酬型の普及で初期コストが下がった
以前は「M&Aを依頼するだけで高額の着手金が発生する」ことが、動き出しのハードルになっていました。しかし近年は、着手金なし・成約時のみ報酬が発生する「成功報酬型」のサービスが増えており、「まず動いてみる」ことへの心理的・金銭的ハードルが下がっています。
プラットフォームや仲介会社の中には、中小企業庁の登録がない業者も存在します。中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)では、登録M&A支援機関の活用を強く推奨しています。契約前に必ず「中小企業庁 登録M&A支援機関データベース」で登録状況を確認しましょう(出典:中小M&Aガイドライン第3版、中小企業庁)。
・M&Aプラットフォームの普及で、小規模案件でも買い手に情報が届きやすくなった
・成功報酬型サービスの増加で、初期コストを抑えて動き出せる環境が整っている
・業者選びは国の登録状況を必ず確認すること(中小M&Aガイドライン準拠)
「情報を出して誰も来なかったら恥ずかしい」への現実的な答え
「会社の情報を出したのに買い手が見つからなかったら、余計惨めになる」「社員や取引先に知られたくない」という不安から、最初の一歩を踏み出せない経営者の方は多くいらっしゃいます。この不安に、現実的にお答えします。
秘密保持の仕組みで「会社名・情報は守られる」
M&Aのプロセスでは、最初から会社名や詳細情報を公開するわけではありません。最初の段階では「ノンネームシート」(=業種・所在地・売上規模など、会社を特定できない範囲の概要情報)だけを買い手候補に提示します。
社名や詳細情報を開示するのは、買い手候補が本格的に関心を示し、秘密保持契約(NDA)(=情報漏洩を法的に禁止する契約)を締結した後に限られます。この仕組みにより、「従業員に知られた」「取引先に噂が広まった」というリスクを大幅に抑えることができます。
【第1段階】ノンネームシートのみ公開(社名・詳細は非開示)
↓ 買い手候補が関心を示した場合のみ
【第2段階】秘密保持契約(NDA)の締結
↓ 契約締結後はじめて
【第3段階】詳細情報・企業名の開示
「動き出したら全情報が知られる」は誤解です。段階的な情報開示が原則です。
「誰も来ない」リスクを下げる事前準備の重要性
仮にすぐ買い手が見つからない場合でも、それは「会社の価値がない」ことを意味しません。多くの場合、情報の見せ方・準備の不足が原因です。
① 直近3期分の決算書を整理し、数字の変動を説明できるようにしておく
② 自社の「強み・差別化ポイント」を箇条書きで言語化する
③ 主要顧客・取引先・従業員・保有許認可の一覧を作成する
④ 売却希望価格の根拠を専門家と事前に確認しておく
準備が整った状態で情報を開示することで、買い手候補が「この会社は良い」と判断しやすくなります。
買い手に選ばれる会社の特徴と今からできる準備
「どんな会社でも売れる」とは言えません。しかし、「買い手に選ばれやすい会社の特徴」を知り、今から準備することで、成約の可能性を高めることができます。
買い手が実際に重視する5つのポイント
以下は、M&A仲介の現場で買い手が共通して重視する評価ポイントです。
| 評価ポイント | 具体的な内容 | 今からできる準備 |
|---|---|---|
| 収益の安定性 | 毎年一定の売上・利益がある。社長不在でも事業が回る仕組みがある。 | 業務マニュアルの整備、権限移譲の推進 |
| 顧客・取引先の安定性 | 長期継続取引の顧客リスト。契約書で関係が担保されている取引先。 | 取引先一覧の整理、長期契約の締結 |
| 人材・技術の継続性 | 特殊技術・ノウハウが複数人に継承されている。キーマンが社長以外にいる。 | 技術の文書化、後継人材の育成 |
| 財務の透明性 | 決算書が整っており、数字の説明ができる。不明な負債がない。 | 決算書の整理、税理士との確認 |
| 許認可・資格の保有 | 建設業許可、医療・介護の指定など、取得に時間がかかる許認可を持っている。 | 保有許認可の一覧作成、更新管理の確認 |
「社長がいないと回らない」会社が抱えるリスク
「自分がいなければ何もできない会社」は、買い手にとって大きなリスクに映ります。承継後に社長が抜けた途端に業績が落ちる可能性が高いからです。実際に、この点が成約を難しくするケースは少なくありません。
もし現状そのような体制であっても、今すぐ大きく変える必要はありません。まず「業務マニュアルを一つ作る」「特定の顧客対応を部下に任せてみる」という小さな一歩から始めることが、将来の企業価値向上につながります。
主要取引先が「社長個人を信頼しているだけ」という場合、承継後に取引が継続されるかどうかが買い手の懸念材料になります。可能であれば、後継担当者を紹介しておく・複数名で対応する体制に変えておくことを検討しましょう。
・収益の安定性・顧客の継続性・財務の透明性が、買い手評価の核心
・「社長がいないと回らない体制」は企業価値を下げる最大の要因の一つ
・今から少しずつ仕組みを作ることで、将来の成約可能性が高まる
自社の市場価値を知る — 最初の無料相談の活用法
「うちの会社に買い手がいるのかどうか、まず知りたい」という方へ、実際に今すぐできる最初のステップをご紹介します。
国の相談窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」を活用する
費用がかかるかどうか心配な方にまずおすすめしたいのが、中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」です。全国47都道府県に設置されており、中小企業であれば無料で相談を受けることができます(出典:中小企業庁)。
民間のM&A仲介会社に依頼する前に、まずここで「自社の状況整理」と「選択肢の確認」をするだけでも、大きな価値があります。「相談したから必ずM&Aをしなければならない」という縛りは一切ありません。
無料相談で確認しておきたい3つのポイント
せっかく相談するなら、以下の3点を事前に考えておくと、より実りある時間になります。
- 自社の概要をまとめておく:売上・利益・従業員数・主な事業内容・保有許認可を簡単にメモしておく
- 「譲渡後にどうなってほしいか」を考えておく:従業員の雇用継続・社名の維持・自分の引退時期など、希望条件を整理しておく
- 「なぜM&Aを検討しているか」を正直に話す準備をする:後継者不在・健康への不安・事業の将来性など、本音を話せると相談の質が上がる
① 直近3期分の決算書を手元に用意する(なければ税理士に依頼)
② 「なぜ事業承継を考えているか」を紙に書き出してみる
③ 最寄りの事業承継・引継ぎ支援センター、または無料相談窓口に問い合わせをする
この3ステップだけで、多くの経営者が「漠然とした不安」から「具体的な見通し」に変わったと感じています。
※ 税務・法務の個別案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況によって異なる場合があります。
一人で答えを出そうとしなくていい。まず話を聞いてもらうだけで、見えてくるものが必ずあります。
4040 VISIONでは、事業承継・M&Aに関する無料相談を随時承っております。ご状況を丁寧にお伺いした上で、最適な選択肢をご提案いたします。
私たちSDアドバイザーズ事業承継グループは、外部の企業にM&Aをご支援するコンサルタントではありません。
自社自身が事業承継・M&Aを積極的に活用し、グループ企業を拡大していく譲渡先として活動しています。
「40人の社員がいる会社を40社つくる」というビジョンのもと、実際に譲渡企業の経営者様と向き合い、ともにグループの未来を築いてきた経験と実績が、このコラムの情報の裏付けとなっています。