M&A用語集 - 税務
M&Aに関する税務事項について解説します
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適格組織再編
適格組織再編は、税制上の要件を満たす組織再編で、株主や法人の譲渡損益が繰り延べられる制度です。完全支配関係(100%)、支配関係(50%超)、共同事業要件のいずれかを満たし、事業継続性、従業員引継ぎ、株式継続保有などの要件充足が必要です。課税の繰延べにより資金負担を軽減でき、円滑な組織再編を可能にする重要な税制です。
適格要件の類型
完全支配
100%
要件緩い
100%
要件緩い
→
支配関係
50%超
要件中間
50%超
要件中間
→
共同事業
その他
要件厳格
その他
要件厳格
適格要件チェックリスト
| 要件 | 完全支配 | 支配関係 | 共同事業 |
|---|---|---|---|
| 金銭不交付 | ○ | ○ | ○ |
| 継続保有 | - | ○ | ○ |
| 事業継続 | - | ○ | ○ |
| 従業員引継 | - | ○ | ○(80%) |
| 事業関連性 | - | - | ○ |
非適格組織再編
非適格組織再編は、税制適格要件を満たさない組織再編で、資産の移転時に時価評価され、譲渡損益が認識されます。含み益がある資産は課税対象となり、多額の税負担が発生する可能性があります。一方で、含み損の実現や、欠損金を持つ会社の活用など、税務上のメリットもあります。適格・非適格の選択は、税務戦略上の重要な判断となります。
非適格組織再編の税務処理
資産移転
時価評価
時価評価
→
譲渡損益
認識
認識
→
法人税
課税
課税
→
税務
資金流出
資金流出
非適格のメリット
- 含み損の実現・損金算入
- 資産の評価替え(ステップアップ)
- 柔軟なスキーム設計
- のれんの税務上認識
非適格のデメリット
- 含み益への課税
- 欠損金の引継制限
- 税務コスト増大
- 資金流出リスク
繰越欠損金
繰越欠損金は、過去の赤字(税務上の欠損金)を将来の黒字と相殺できる制度で、法人税負担を軽減する効果があります。M&Aにおいては重要な資産価値となりますが、組織再編時の引継ぎには制限があります。適格合併では一定要件下で引継可能ですが、特定資産譲渡等があると制限されます。繰越期限は10年で、有効活用には慎重な税務プランニングが必要です。
繰越欠損金の引継制限
| 取引類型 | 引継可否 | 制限事項 |
|---|---|---|
| 適格合併 | ○(制限あり) | 支配関係5年以上等 |
| 非適格合併 | × | 消滅 |
| 株式譲渡 | ○ | 法人格継続 |
| 事業譲渡 | × | 譲渡側に残存 |
💡 繰越欠損金の価値評価
- 将来の課税所得見込み
- 繰越期限(最長10年)
- 実効税率(約30%)での現在価値
- 利用制限リスクの考慮
みなし配当
みなし配当は、株式の売却代金のうち、税法上配当とみなされる部分のことです。会社が自己株式を取得する際や、組織再編で株主が金銭等を受け取る場合に発生します。資本金等の額を超える部分が配当所得として課税され、株式譲渡所得とは別の税率が適用されます。中小企業のM&Aでは、株式譲渡の対価の一部がみなし配当となるケースが多く、税務計算に注意が必要です。
みなし配当の計算
交付金銭等
売却代金
売却代金
−
資本金等の額
対応部分
対応部分
=
みなし配当
配当所得
配当所得
課税関係の比較
| 項目 | 株式譲渡所得 | みなし配当 |
|---|---|---|
| 税率(個人) | 20.315%(分離課税) | 累進税率(総合課税) |
| 控除 | 取得費控除可 | 配当控除あり |
| 法人の場合 | 全額課税 | 益金不算入制度あり |
💡 具体例
- 売却代金:1億円
- 資本金等の額:2,000万円
- みなし配当:8,000万円(総合課税)
- 株式譲渡所得:2,000万円−取得価額(分離課税)
タックスヘイブン対策税制
タックスヘイブン対策税制は、軽課税国の子会社を利用した租税回避を防止する制度です。実効税率20%未満の国・地域に所在する外国子会社の所得を、一定の要件下で日本の親会社の所得に合算して課税します。クロスボーダーM&Aでは、対象国の税率や事業実体の有無を事前確認し、適用除外要件(経済活動基準)の充足を検討することが重要です。
タックスヘイブン税制の適用フロー
外国子会社
税率20%未満
税率20%未満
→
適用除外
要件確認
要件確認
→
合算課税
または除外
または除外
適用除外要件(経済活動基準)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 事業基準 | 主たる事業が株式保有、債券・無体財産権保有等でない |
| 実体基準 | 本店所在地国に事業管理・支配の拠点がある |
| 管理支配基準 | 本店所在地国で事業の管理・支配を行っている |
| 所在地国基準 | 主として本店所在地国で事業を行っている |
| 非関連者基準 | 主として関連者以外と取引している |
対象となる軽課税国
- 実効税率20%未満の国・地域
- シンガポール、香港、BVI等
- 一部のヨーロッパ諸国
- 中東諸国(UAE等)
M&A実務での留意点
- 買収対象の所在国税率確認
- 事業実体の検証
- 適用除外要件の充足確認
- ストラクチャー再構築の検討
タックスシールド
タックスシールドは、支払利息などの損金算入により節税効果を得ることで、LBOにおいて重要な価値創造源となります。借入金の支払利息が損金となることで、実効税率分(約30%)の税負担が軽減されます。負債による資本コストの低下と、エクイティリターンの向上に寄与しますが、過度なレバレッジは財務リスクを高めるため、最適資本構成の設計が重要です。
タックスシールド = 支払利息 × 実効税率
年間節税額 = 借入金 × 金利 × 税率
年間節税額 = 借入金 × 金利 × 税率
LBOでのタックスシールド効果
借入金
10億円
10億円
×
金利
3%
3%
×
税率
30%
30%
=
節税額
900万円/年
900万円/年
移転価格税制
移転価格税制は、関連企業間取引を独立企業間価格(アームスレングス価格)で行うことを求める国際課税制度です。クロスボーダーM&A後のグループ間取引で重要となり、不適切な価格設定は追徴課税や二重課税のリスクがあります。移転価格文書の作成、事前確認制度(APA)の活用、各国税務当局への対応など、専門的な税務管理が必要です。
移転価格の算定方法
| 方法 | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 独立価格比準法 | 市場価格との比較 | 汎用品取引 |
| 再販売価格基準法 | 売上から逆算 | 販売会社 |
| 原価基準法 | コストにマークアップ | 製造委託 |
| 利益分割法 | 合算利益を配分 | 高度な無形資産 |
| 取引単位営業利益法 | 営業利益率比較 | 最も一般的 |