事業承継は「買収」ではなく「仲間探し」|代表高木が語る事業承継の流儀
一般的にM&A(Mergers and Acquisitions:会社の合併・買収)は、「他の会社を買う行為」として捉えられることがほとんどです。しかし、SDアドバイザーズ代表・高木の考え方は、その一般的なイメージとは大きく異なります。
「M&Aのゴールは、良い仲間を見つけること。」
この考えをもとに代表の高木がどのようにM&Aを行ってきたのかを、事業承継・M&Aを検討している中小企業の経営者の方に向けて、インタビュー形式でお届けします。買収金額よりも「一緒に成長できる相手かどうか」を優先するその姿勢は、事業承継の相談先を探している方にとっても、大きなヒントになるはずです。
目次
事業承継で大切にしていること――買収プロセスのゴールとは何か
事業承継の買収プロセスにおいて、多くの会社は「良い条件で買えるか」を最優先に考えます。しかしSDアドバイザーズでは、プロセスの段階から別の問いを持って臨んでいます。代表の高木が語るゴールとは、「仲間になれる相手かどうかを確かめること」です。
── 事業承継の買収プロセスにおいて、どのようなことをゴールとして考えていますか。
そもそも我々が事業承継に取り組んでいるのは、グループとして成長していきたいという思いがあるからです。その中で、一緒に楽しく成長できる仲間を探すというのが、事業承継に取り組む根本的な姿勢です。
買収プロセスの中で最も大切にしているのは、「今後一緒に成長していけるかどうか」「楽しく仕事ができる相手かどうか」を見極めることです。一般的にはM&Aというと「買収して終わり」というイメージがあるかもしれませんが、我々にとっては買収が完了してからが本当のスタートです。
── M&A後も会社を持ち続け、長期的に関わり続けるスタンスについて教えてください。
会社によっては、買収した後すぐに別の会社へ転売するケースもあります。我々はそういった考え方はまったくなく、本当に一緒にやり続けることが大前提です。だから「一緒にやれる仲間かどうか」という視点がプロセスの最初から必要になってくるんです。
相手企業を見極める2つのポイント――事業の相性と人の相性
事業承継における「良い仲間」を見つけるために、具体的にどこを見るべきでしょうか。代表の高木には事業承継の現場で積み重ねてきた経験から生まれた、独自の判断軸があります。
── 「良い仲間かどうか」を判断するために、具体的にどのようなところを見ていますか。
主に2つです。
1つ目は、事業のシナジー(相乗効果)です。売主様が経営されている会社の事業が、我々の事業と相乗効果を発揮できるかどうか。これは当然、確認すべき基本的な要素です。現在は我々もIT企業ですので、同じIT領域の会社の方がシナジーを出しやすいという部分はあります。
2つ目が、「相性」です。同じ仲間として一緒に楽しくやっていける相手かどうか。企業文化や社員の雰囲気、経営者としての考え方が我々のグループと合うかどうか、ここを非常に重視しています。最初のうちは多少違いがあってもなんとかなるかもしれませんが、長くともに歩んでいこうと考えたとき、相性は何より大切な要素になります。
── 「相性」は数値化が難しい部分だと思いますが、どのように確認していますか。
時間をかけてじっくりと確認することが必要です。財務的な数字は資料を見れば把握できますが、人と人との相性は数字には出てきません。我々にとって、M&Aは最終的に「合う・合わない」という判断が軸になっています。我々と合わないと感じた相手であっても、必ず別に合う会社はあるはずです。だから、無理にM&Aを進めることは誰にとっても良くないと考えています。
「どんな相手が理想か」――SDアドバイザーズと相性の良い会社とは
「相性が大事」とは言っても、どのような経営スタイルの会社がSDアドバイザーズと相性が良いのでしょうか。代表の高木の言葉から、相手選びの基準がより具体的に見えてきます。事業承継を検討している経営者の方にとっても、自社が対象となり得るかを考えるヒントになります。
── 具体的に、どのような考え方・社風の会社が相性が良いと感じますか。
着実に、真面目に積み上げてこられた方が、我々とは相性が良いと思っています。地に足のついた経営を続けてこられた会社は、長期的に一緒に成長していく上で、とても信頼できるパートナーになります。
一方で、非常に積極的な拡大志向の会社ですと、経営のスピード感や優先順位の置き方が我々とは少し異なることもあります。もちろんそれが悪いわけではなく、合う・合わないの問題です。我々のグループに合うのは、着実に積み上げてきた実績と誠実さを持った経営者の方です。
── そういった経営スタイルは、財務の数字にも表れてくるものですか。
表れてきますね。たとえば損益計算書(PL)を見ると、その会社がどのようにお金を使ってきたかが見えてきます。社員のためにきちんと投資してきたか、長期的な視点で経営してきたかどうかは、数字に自然と反映されるものです。だから、経営者の人柄と財務の数字は、多くの場合で一致しています。
企業概要書の「顔写真」から始まる――代表・高木独自の相性見極め術
事業承継・M&Aのプロセスでは、最初に受け取る情報は企業概要書という資料です。財務数値やビジネスモデルが記載されたその資料を、代表の高木は少し違う読み方をしています。その独自の視点が、相性の判断に大きく影響しているといいます。
── 相性を確かめるために、具体的にどのようなことをしていますか。
まず、売主様の顔写真をじっくり拝見するようにしています。
最初の段階では、仲介会社から企業概要書という資料しかいただけないことがほとんどです。そこに掲載されている経営者のプロフィール写真を、とても丁寧に見るようにしています。「前向きに挑戦してきた方なのか」「真面目に着実に積み上げてきた誠実な方なのか」など、顔からある程度の人柄や経営スタイルが伝わってくるものです。
── 決算書よりも先に顔写真を見るということですか。
正直に言えば、最も重要視しているのはプロフィール写真かもしれません。なぜかというと、相性があってこその業績だと考えているからです。企業概要書に記載されている数字はあくまで過去の実績です。一方で「この方と一緒にやっていけるか」という判断は、未来に向けたものです。
経営者の雰囲気には、その会社全体の文化や社員の特性が反映されています。今まで関わってきた会社を振り返っても、経営者の雰囲気に近い社員が自然と集まっているケースがほとんどです。だから、経営者を見ることで会社全体の相性をある程度判断できると思っています。
── これまで関わってきた会社で、その読みは実際に当たっていましたか。
感じています。最初に写真で受けた印象と、実際に関わった社員の皆さんの雰囲気が、ほぼ一致していました。大きく外れたことはないですね。
投資対効果よりも「相乗効果と相性」を優先する理由――投資回収と相性のバランスとは?
M&Aは経営判断であり、当然ながら投資回収の観点は欠かせません。しかし代表の高木は、財務的な数値の優先順位を必ずしも最上位には置いていないと言います。中小企業の事業承継において、この考え方が何を意味するのかをお聞きしました。
── 投資回収の観点と、相性重視のスタンスはどのようにバランスを取っていますか。
もちろん、IRR(内部収益率:投資に対して期待できる収益の割合を示す指標)などを用いて「実際にどのくらいの利回りになるか」は、経営者として確認すべきことだと思っています。
ただ、最終的に最も大切にしているのは、事業の相乗効果が発揮できるかどうか、そしてその相乗効果を最大化するために相性の良い相手かどうかという部分です。財務数値は将来を完全に保証するものではありませんが、「この方たちと一緒に頑張れる」という確信は、長期的な成功につながると信じています。
── 数字よりも人柄・相性でM&Aを決断したケースはありましたか。
あります。現状の財務数値だけを見れば、それほど高い利回りが期待できないと感じる案件もありました。それでも「この方と一緒にやりたい」という思いで前に進んだケースがあります。
むしろ、現時点では数字がさほど大きくない会社の方が、伸びしろがあるとも言えます。磨けば光る会社と一緒に成長していく方が、長期的にはずっと大きな価値があると考えています。
意向表明前に自ら行う「事前調査」――DDより早く始まる準備とは
一般的なM&Aのプロセスでは、意向表明書(LOI:Letter of Intent)を提出した後にDD(デュー・ディリジェンス:財務・法務などを専門家が詳細に調査するプロセス)が行われます。しかし代表の高木は、そのDDが始まるより前から、独自の詳細な調査を自ら実施しています。この「事前調査」が、その後のプロセスに大きな影響を与えています。
── 意向表明書を提出する前に、独自の調査をされているとお聞きしました。
はい。意向表明書を提出する前に、できる限り多くの資料をいただいて、自分自身でかなり細かく調査するようにしています。ある意味、簡易的なDDが意向表明書の提出前に完了している状態です。
これまでの案件を積み重ねる中で、確認すべき観点がまとまったフォーマットができてきていて、それに沿って1件ごとに丁寧に調査しています。1件あたりに費やす時間は、数十時間単位になります。
── 専門家によるDDで、予想外の事実が出てくることはありますか。
正直、あまりないです。それは、事前の調査で相手の会社のことをかなり深く理解した上で意向表明書を出しているからだと思います。相手が真面目に着実に経営されてきた方であるという確信が持てた上で進んでいますので、いわゆる「想定外の発見」は少ないです。
本格的なDDは、事前に行った簡易調査の内容が正しかったかどうかを検証する作業になっています。意向表明書を出すタイミングでは、すでに「この案件で進める」という覚悟ができている状態です。
PMI(統合プロセス)を見据えたDD――統合後を意識した独自の視点
DDは財務・法務上のリスク確認だけではありません。代表の高木のDDには、PMI(Post Merger Integration:M&Aや事業承継完了後の統合プロセス)を見越した独自の質問が含まれています。この視点は、M&Aを長期的な仲間づくりと捉えているからこそ生まれるものです。
── DDの段階で、PMIを意識した取り組みをしているとお聞きしました。
自分自身で事前調査を深く行っているので、相手の会社の課題もある程度見えてきます。そのため、DD時点の質問事項も、PMIを見据えた内容になっていることがあります。
たとえば、「御社の社員の中で、社内イベントの企画・運営を担当できる方はいらっしゃいますか」といった質問です。PMIを進めていく上で、社員同士の関係構築は非常に重要です。そういった役割を担える人材が社内にいるかどうかは、統合後の取り組みを考える上でとても大切な情報なんです。
── 仲介会社から「なぜその質問を?」と聞かれることもありそうですね。
あります。でも、M&Aを長期的な仲間づくりと考えているからこそ、統合後のことを早い段階から考えておく必要があるんです。基本合意の前からPMIの準備を始めることもありますし、まだ合意に至っていない段階でPMIのプロジェクトチームを立ち上げることすらあります。結果としてその案件が流れることもありますが、早い段階から準備することが何より大切だと思っています。
トップ面談で「もっと深く知りたい」――関係構築への本音
代表の高木にとって、トップ面談は単なる確認の場ではありません。相手をより深く知るための貴重な機会であり、本音を言えば何度でも重ねたいと考えています。事業承継における関係構築に対する、真摯な姿勢が伝わるエピソードです。
── トップ面談には、どのような姿勢で臨んでいますか。
本音を言えば、何度でもお会いして、もっと深く相手のことを知りたいです。ただ、相手は経営者でお忙しい方がほとんどですし、何度も時間をいただくのは申し訳ないので、1回、多くて2回という形にしています。
本当はもっと時間をかけて関係を築きたい。たとえば一緒に食事をしたり、ゴルフに行ったりといった場を設けることができれば、お互いをより深く理解できると思っています。数字や書類だけでは分からない、その方の人柄や価値観が見えてくるからです。
── 実際にそういった時間を取ることもありますか。
あります。仲介会社が間に入ることが多いので、制約がある場面もありますが、相手の方と直接お会いして話す機会をできるだけ大切にしています。M&Aは契約書のやりとりで終わるものではなく、人と人との信頼関係があってこそ長く続いていくものだと思っています。
おわりに
今回のインタビューを通じて、SDアドバイザーズ代表・高木のM&A・事業承継に対する考え方の根本が見えてきました。
「合う・合わない、それだけです。我々と合わないとしても、必ず合う会社は他にある。だからこそ、無理に進める必要はありません。」
そのように語る高木は、M&Aを「買収」と捉えるのではなく、「ともに一生を過ごす仲間を探す旅」と位置づけています。
事業承継・M&Aに関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。